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4.仲間ができた勇者

3話から来てくれた方にありがとう

「......はっ!」


 目を覚ますと、見慣れた天井が見えた。どうやら俺はギルドの2階で眠っていたらしい。


「...いってぇ...。」


 体を起こすと腹に鋭い痛みが走る。そういえば、魔人に危うく殺されかけて、誰かに助けられたはずだ。俺が痛みでうめいていると、階段を上がる音が聞こえてきた。


「あっ、セインさん。ようやく起きましたか。セインさん、ここに運ばれてから丸一日寝てたんですよ。」


「オレクさんか...それで、俺をここまで運び込んでくれた人は誰なんだ?」


「えっ、あぁ。その人なら2日前に3つも依頼を受けて、町を出ましたよ。いやぁ、本当なら止めるんですけど、いっきゅうですよ一級。正直、熟練の冒険者は皆北に行ってると思ってましたから、あなたといい一級の方といい、このギルドもちょっと運が向いてきましたよ。あ、水持ってきます。」


 階段を駆け降りる彼を見ながら、俺はため息をついた。魔人は想定外だったとはいえ、もしさっきの冒険者に助けてもらえなければ死んでいた。全く、今の自分の弱さには心底うんざりする。


 俺を助けてくれたのは一級だとオレクさんは言っていたな。どうりで魔人を簡単に屠れたわけだ。ギルドの冒険者は一番下から五級、四級、三級、二級、一級だ。ひとつ上の級への昇格は、全て実績で決まる。一級まで上り詰めた奴らは基本的に人外だ。そんな奴に偶然助けてもらえたのは本当に運が良かった。待っているとオレクが戻ってきた。


「それにしても良かったですよ。ギルドで待っていたら急にボロボロのあなたが運び込まれてきたんです。死んでるのかと思いましたよ。フレイダさんが言うには、腹の骨は折れてないのを数えた方が早いらしいですよ。でも良かったです。セインさん死んでもおかしくなかったんですから。」


オレクは溜め息をつく。


「そもそもですよ、今回は魔人が出たらしいですけど、仮に魔人がいなくとも、ゴブリンの巣に新人が入るのは危険だということをセインさんはわかっていない!だからあれほ」


「ふ、フレイダ...俺を助けてくれた人はフレイダって言うのか。」


 俺は彼の話を遮って言った。心配していたのはわかるが、長い説教は今聞きたくない。


「・・・はぁ...。すいません。まだ言ってませんでしたね。そうです。あなたを運んできたのがそのフレイダさんなんです。」


 彼は少し不満そうだが、説教をやめた。こんな風に話しているとギルドの扉が勢いよく開かれた。


「ギルドへようこそっすよ!」


 下でメイヤーの挨拶が聞こえる。俺が身を乗り出して見てみると、あのとき俺を助けた冒険者、フレイダがいた。


「よぉメイヤーちゃん。これの換金頼むぜ。」


 ドサッとギルドのカウンターで鈍い音がなる。メイヤーはそれを確認しながら口を開く。


「2日で3つもこなすなんて。さっすが一級っすね。」


 メイヤーに褒められたフレイダは誇らしげにうんうんとうなずく。


「そうだろう、そうだろう。これぐらい朝飯前だからな。」


「...はい、確認は済みました。こちらが報酬っす。」


 彼女は報酬を数えたあとメイヤーに聞く。


「ありがとよ。それと、上のあいつはもう起きたのか?」


「起きたっすよ。いまオレクさんと一緒に上で話してるはずっす。」


「そうか、ありがとよ。」


 フレイダはそう言うと2階に上がってきた。俺は彼女と目が合う。


「よぉ新人。随分コテンパンにやられてたんだぜ。俺に感謝しな。」


 彼女は近くの椅子に腰掛けながらそう言った。


「あぁ、ありがとう。ほんとに助かったよ。フレイダさんが居なかったら、俺の人生は終わってたよ。」


 俺の感謝を聞いたあと、彼女はオレクの方を向く。


「オレクさん、すまないがセインさんと二人きりにしてくれないか?大事な話があるんだ。」 


「えっ、あ、はいわかりました。何かあったら呼んでください。どうせ暇ですから。」


 そう言うとオレクは階段を降りていった。階段を降りる音が聞こえなくなると、彼女は口を開いた。


「さて。()()()さんよぉ。まさかこんな辺境に居るとはなぁ。」


 どうやら彼女は俺の正体に気づいているようだ。


「...知ってたのか。昔と今じゃ、顔以外全て違うが。で、何のようなんだ?」


 彼女はニヤリと笑う。


「まぁ顔が同じだからな。ギルランでしばらく暮らしたことがあれば誰でも顔は知ってるよ。さて、要求が一つと、個人的な質問が一つだ。」


「...内容次第だ。」


 俺の返答を聞き、彼女は話し始めた。


「勇者ステラル様が、あんたをお呼びだ。あんたを首都ギルランに連れて来て欲しいとさ。一途だなぁ。5年前突然居なくなった幼なじみを、未だに気にかけてくれてんだから。」


 あいつが...俺を...?仮に行ったとして、今さら俺になにが出来ると思ってるんだろうか。もう俺は昔の俺じゃない。


「無理だ。戻る気はないと伝えてくれ。」


「だろうな。魔人すら倒せなくなったあんたが今ステラルのパーティーに入ったとしても、お荷物だろうしな。だが私も引けないな。連れ戻したら好きなだけ金をもらえるって話なんだ。」


「...俺は引いてもらいたいが。」


 彼女はククッ、と笑う。


「まぁいい、この話はあとでしよう。」



 彼女は真剣な表情になる。


「この魔道具を見てくれよ。」


 俺はベッドに投げられた魔道具を見る。魔道具というのは魔力を流し込むことで効果を発揮するものだ。放つ魔法の威力を上げたり、回復魔法が組み込まれた物だったり、大体は戦闘の補助として使われていた。それぐらいは覚えている。しかし、投げられたものは見たことのない形状のものだった。


「まさか、5年間で魔道具を忘れたとは言わないよな?こいつは魔力量計測器だ。対象の体内の魔力量を調べることが出来るものだ。あたいは何気なくあんたにこれを使ってみたんだよ。」


「今はそんなものもあるのか。」


「魔力は全ての生命の根幹だ。全ての生き物が持っているし、空気にも存在している。この世界を作る物質のひとつだ。あたいらはそれを使って魔法も使う。そして体内に一滴もなければ、あたいらはすぐに死んでしまう。魔法はあたいら冒険者に必須のものだ。そしてそれを扱うための魔力はもっと大切だ。」


「...もったいぶんな。さっさと言えよ」


「ははっ、そうだな。あんたの魔力は、何の訓練もしていない一般人の10/1しかない。あんたは生きるだけで精一杯な量しか体内にないんだ。おかしいな、あんたは5年前、当たり前に魔法を使っていたはずだ。」


「魔力は魔法を使えば使うほど伸びていく。だが今のあんたはどうだ?この程度の量しかないなら、今のあんたは魔法を使うことすらできないはずだ。なぁ教えてくれよ、5年前何があったんだ?」


 ...感覚で感じてはいたが、いざ数字で突きつけられると、思わず現実から目を背けたくなる。


「...まぁ別に、今更絶対に知られたくない話というわけでもない。」


「5年半ぐらいか。魔王四天王と言われている、4体の魔物達がいるだろ。俺らはそいつらのうちの一体と戦って敗北した。そのときからだ、」


「...は?そんな話聞いたこともないぞ?それに5年前なんて魔王はいないはずだが?」


「...勇者本人が若かったとはいえ、一級冒険者を何人も引き連れた勇者一行が敗北したなんて、世間に知られたら混乱が起こる。それに魔王が選ぶ四人は、魔物の中で一番強い四人だ。俺達はたまたま四天王の素質のある相手と戦った。それだけだ。」


「そいつは封印魔法とか言う特殊な魔法を使う奴だった。俺はそいつの封印魔法をもろに受けて、今や常人の10/1にまでなったわけだ。」


 俺の話を聞いた彼女はうつむいて黙り込む。しかし、すぐに顔を上げた


「それはずいぶんと大変だったな。」


 俺はずいぶんあっさりした感想に拍子抜けする。


「ずいぶんあっさりしてんな。最強の男の悲劇の話だぞ。もっと色々ないのか。」


 フレイダは笑う。


「そりゃあな。本人がそう言ってるんだ。信じるしかないだろ。それにあんたより悲惨な奴だっているさ。何せあんたはまだ生きているからな。なんだ、同情されたかったか?」


 フレイダは椅子に座り直す。


「さて、まぁ聞きたいことも聞けたし、さっきの話の続きをしよう。あたいはあんたをさっさと勇者のもとへ連れていきたい。あんたはどうだ?」


「...どうせ、引き下がる気なんてないんだろ。」


 彼女の目に期待が宿る。


「ただし、条件がある。俺が行きたいと思ったときだ。」


 期待の目がすぐに不満に変わる。


「それは卑怯じゃねぇか?」


「お前が想像するようなことはしねぇ。安心しろ。」


「...へっ。その言葉信じてやるよ。それなら、しばらくはあんたとパーティ組んで、逃げねぇように監視させてもらうぜ。」


 彼女は立ち上がり、俺の目の前に手を差し出す。俺はその手を強く握った。


「そうだな。しばらくの間、よろしく頼む。」




今のところ物語の本筋は予定どおり書けてますが、細かいところが変わりまくりです笑。人物を消したり、追加したり。設定をいつ出して、いつ説明するかだったり。特に説明はできるだけ自然な流れを作ろうとして苦労してます笑。表現の方ももっと上手くできるだろうなぁと思いながら妥協ばかり。これからも頑張ります。4話読んでくれた方に感謝。

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