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【第5話】ひふみ祝詞

【第5話】ひふみ祝詞


《行動範囲》寺尾上一丁目


今日は みんなで木をきる日


うちの柱にするための木を 山におねがいをして いっぽん わけてもらうんだ


お祭りだから わくわくする


山のてっぺんに ひとり また ひとり と あつまり始める


ふたりの姫様が てちてち あらわれた


幼いふたりも バカも 元気にやってきた


みんなあつまったところで


太陽におじぎをする


おねがいします


木と山におじぎをする


おねがいします


そしてお祭りが始まる


みんなで歌って みんなで踊る


とにかく明るく とにかく明るく


「あ そっれっ!」


まぬけなかけごえを合図に 手びょうしが始まる


ぱんっ ぱんっ ぱんっ ぱんっ


ふたりの姫様が 踊りだす


手をつないでくるくると回ったり ぴょんぴょんと飛びはねてウサギの真似をしたり


思いつくまま ひょうしにみをゆだね 自由に踊る


だれかが歌い始める


ひー ふー みー よー


いっと むっと なーな やって


こーだまーお とーすっ


それに合わせて ひとり またひとり 歌い始める


ひー ふー みー よー


いっと むっと なーな やって


こーだまーお とーすっ


みんなの声がひとつになり 大きくなってきたところで


ちからに自信のあるのが斧をにぎる


木のそばまでちかより 斧をめいっぱい ちからいっぱい木にふりおろす


ざっ


さいしょの切り口が木に刻まれ みんなの中から歓声がわきおこる


ひー ふー みー よー


いっと むっと なーな やって


こーだまーお とーすっ


歌も 手びょうしも どんどんと大きくなっていく


つぎからつぎへと 斧をにぎるのがあらわれる


ざくりざくりと 斧がふりおろされ


木の切り口はしだいにふかくなっていく


ひー ふー みー よー


いっと むっと なーな やって


こーだまーお とーすっ


ふたりの姫様が けらけらと笑いながら踊る


みんなの中から 手びょうしにあきたらず どすんどすんと しこをふむのもあらわれる


ひー ふー みー よー


いっと むっと なーな やって


こーだまーお とーすっ


歌と手びょうしに どすんっ どすんっ と 山の土をふむ音がまじわる


どすんっ どすんっ


しこをふむのがしだいにふえ 山がゆれ 木がふるえ始める


ひー ふー みー よー


いっと むっと なーな やって


こーだまーお とーすっ


われもわれもと 斧をにぎったのが いさんで木にかけより ちからいっぱいに斧をふりおろす


「おらー!」「さー!」


おもいおもいに けもののような大声をあげながら これでもかと言わんばかりに ちからいっぱいに斧をふりおろす


ひー ふー みー よー


いっと むっと なーな やって


こーだまーお とーすっ


ふたりの姫様が けらけら笑い 踊る


ひー ふー みー よー


いっと むっと なーな やって


こーだまーお とーすっ


そして


木が


ゆっくりと


大きくかたむき


たおれる


どさっ


ふたりの姫様が 踊るのをやめた


みんないっせいに しんと静まりかえった


頭のてっぺんから


太陽の明かりがさし込んだ


ふたりの姫様が 太陽をみつめ みんなをみつめ


口を開いた


あかりが とおりました


太陽がにっこりと笑う


みんないっせいにおたけびをあげながら 木のそばに駆けよる


風がゆれ 木のにおいがあたりいちめんにひろがる


木をさわったり 撫でたり 抱きしめたり おもいおもいに 木と遊ぶ


ふいに


みんな きのうバカが言っていた湧き水のことを思いだす


「こっちらて 」


バカに言われるまま 何人かがバカについて行く


湧き水が ほんとうに湧いていた


みんな 飛びはねてそちらへとむかう ふたりの姫様も てちてち と あとをおう


バカが得意気に言う


「本当らったろ!」


バカがおいしそうに湧き水を飲む


みんなのどが渇いていたものだから がまんできずに ひとり またひとり 湧き水を飲み始める ぐびぐび飲む


汗びっしょりだから 顔もあらう ばしゃばしゃあらう


ふたりの姫様も 小さな両手で水をすくいあげ こくりと水を 口にした


飲みほしたあとに はあーっと息をはきながら むじゃきにほほえんだ


幸せだったー


水遊びをして 木と遊んで


僕たちは 西日がさすまで山のてっぺんでのんびりと過ごした


くーくーとうたた寝をするふたりの姫様が とても愛らしかった

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