【第2話】ペロ
【第2話】ペロ
《行動範囲》寺尾 上新栄町 寺尾上一丁目
朝日が すそのを照らす
背伸びをして 深呼吸をする
風を吸いこみ
空気をもらって
息をはく
すんだ空気が とてもおいしい
みんな起きてきた
ふたりの姫様も おはよう だ
草の実をつまみながら みんなで朝日をながめた
ふたりの姫様が
めを閉じて 手を合わせる
太陽にむかって
おじぎをした
僕たちも めを閉じて 手を合わせて 太陽に おじぎをした
ここに
住みます
おねがいします
太陽が にっこりと 笑う
僕たちの暮らしが始まった
暮らすためには
「めし」がいる
めしがなければ
はら が すく
暮らすためには
「うち」がいる
うちがなければ
はじまら ない
僕たちは「めし組」と「うち組」のふた手にわかれた
めし組は 海までめしをとりに行くのだが そのまえに まず 道をつくった
僕たちの暮らす すそのから だんだんの丘までの道
これで迷わずに海まで行ける
だんだんの丘は まいにち好きにかけおりて遊びたいから 道はつくらない
ウミドリたちも きっとよろこぶ
うち組は
あなを ほる
あなと 柱と 屋根があれば うちになる
僕たちのうちは
シンプルだ
えっさ ほいさ えっさ ほいさ
えっさ ほいさ えっさ ほいさ
歌って あなをほる
あなほりはつかれるから 歌って 楽しくやる
えっさ ほいさ えっさ ほいさ
えっさ ほいさ えっさ ほいさ
歌って 踊って
楽しく あなを ほる
楽しいから あっという間にあなほりは終わる
ふたりの姫様が
野イチゴをもってきた
すっぱくて おいしい
つかれがふっとぶ
汗をぬぐって ひとやすみ
ふたりの姫様が
えっさ ほいさ えっさ ほいさ
と 飛びはねる
みんな笑う
ふたりの姫様が さらに 楽しくて 踊りだす
えっさ ほいさ えっさ ほいさ
ほんとうは
ここにくるまえ
僕たちは
姫様のことでちょっともめたんだ
まえの村の連中に 昔からの「きまり」で 遠くにうつり住むときにつれて行けるのは「ひとり」の姫様だけだって おこられた
姫様は子供をうめる とくべつな存在
姫様がへると そのぶん うまれる子供の数も へる
だから「ひとり」しかつれて行っちゃいけない
「きまり」だ って
でも その「きまり」が 僕たちにはわからなかった
はらがたった
だって納得できないよ
かわいそうじゃないか
「ひとり」なんて
姫様はまだ小さいんだよ
友達がいないとさみしいよ
さみしいに決まってる
僕たちは まえの村の連中に なんべんも なんべんも 頭をさげて おねがいをして どうにか ゆるしてもらえた
僕たちは
ふたりの姫様をつれて
村を はなれた
えっさ ほいさ えっさ ほいさ
えっさ ほいさ えっさ ほいさ
ふたりの姫様にみとれていると めし組が たくさんのサカナを抱えて海から戻ってきた
みんなあつまったので さぁめしだ と いきたいところだが そのまえに やることがある
山にいって ヘビたちに挨拶をする
僕たちは まだ ヘビたちに挨拶をしていなかった
きのう ヘビたちに会ったにもかかわらず すぐにひきかえした
しかも サカナのにおいをぷんぷんさせて
ヘビたちも サカナを食いたかったにちがいない
ちょっと反省した
僕たちは サカナのほとんどを ヘビたちにあげようと決めた
サカナは ヘビたちが食いやすいようにぶつぎりにした
ぶつぎりを手みやげに山へ持っていき ヘビたちに みんなの顔を おぼえてもらうんだ
しんと しずかに 山のまえ
おねがいします
おじぎをして 山に 足を ふみ入れる
こい 樹木の匂いに包まれる
樹木の ひとり ひとり に
おじぎを する
足もとをヘビが はう
ぶつぎりをほおると ヘビが ぺろり と まるのみをしてさってゆく
ヘビが つぎつぎにあらわれる 僕たちは ぶつぎりをほおる ぺろり
たくさんのヘビたちが ぶつぎり を 食いにあつまる ぺろり ぺろり
すべてのぶつぎりをくばり終えたところで ようやく 山のてっぺんについた
夕日が 西の空を
明るく 染める
ふたりの姫様が 太陽におじぎをした
僕たちも おじぎをした
太陽が にこり と 微笑んだ
僕たちも 微笑んだ
ほっとした
ふたりの姫様が てってってっ と きた道をくだり始める
僕たちも あわてて あとをおう
ふたりの姫様は
手をつないでいた
手をつないで 楽しそうに おしゃべりをしていた
道のとちゅう 不思議と ヘビたちに 会わなかった
樹木の匂いが とても 心地好かった
すそのについた僕たちは 火を起こし 余りのサカナをみんなでわけあった