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第25話 クラスメイトたちの態度がおかしい……

 気がついたら、いつの間にか日は沈み夜になっていた。


 


 とりあえず、何かを口に入れて、風呂にも入ったのだが、ほとんど記憶にない。




 俺は先ほどの真衣とのやり取りばかりが気になってしまい、他のことは何も考えることができなかった。


 


 真衣がいったいどういう話を周りにしているのかと考えると夜も眠れない。


 


 布団の中に入ってもそれは変わらなかった。


 


 陰キャボッチからまさか性犯罪者になってしまうとはな……。


 


 やはり、人と関わるとロクなことにならない。


 


 結局、俺はほとんど一睡もすることなく朝を迎えることになってしまった。


 


 ただでさえ冴えない俺の顔は今や目の下にできたクマのせいで、冴えないどころか、不気味な様相すら呈している。


 


 正直に言って、学校に行きたくはなかったが、ここで休んでしまえばますます真衣の告発に正当性がついてしまう。


 


 俺は重い体を引きずりながら、なんとか制服に着替えて、家に唯一ある鏡の前にたつ。


 


 よれた制服を着た陰キャがそこにはいた。


 


 俺は自身の姿と昨日の真衣の姿を脳裏に浮かべて対比する。


 


 見た目が9割……とはよく言われることだが、この俺——陰キャボッチ——と真衣——元アイドルの美少女——。


 


 どちらにより信頼性があるかは誰が見ても明らかであった。


 


 今頃真衣の告発を真に受けた教師やクラスメイトたちが俺を糾弾しようと待ち構えているだろう。


 


 が……それでも俺は行かなければならない。


 


 男には負けるとわかっていても、行かなければならない時がある。




 いやまあ……そんな格好をつけても、現実は変わらないし、足の震えも止まらないが。




 それに俺は「男らしさ」をアピールするマッチョイズムとは無縁の男女平等主義者だ。




 が……それでもせめて自分の心の中だけは強気なフリをしていないと、やっていられなかった。




 まったく……俺はこの年にして、既に多くは望んでいないというのに……。




 リアルで青春を送るとか、彼女を作ることとかはおろか友達を作ることすらとうに諦めているのに。




 ただ部屋で一人静かに俺の好きな二次元作品に囲まれて、『AI彼女』とラブラブできればそれでよいのに……この世界はそれすら許してくれないのか。




 俺は大きなため息をつきながら、部屋を出て、学校へ向かう。




 春の暖かな空気と日差しが道を照らしている。




 何もなくとも思わず気分がウキウキしてしまう陽気といえる。




 だが、俺の心はそんな空気感と正反対にどんよりとしていた。




 学校へ向かう時はいつもテンションは低いが、今日ほど低いことはなかった。




 自転車の錆びたペダルはいつにもましてまるで重りでもつけられているかのように重い。




 だが、それでも一歩一歩ペダルをこげば前と進んでいく……いや進んでいってしまう。




 やがて俺はついに学校へと到着してしまう。




 駐輪場、下駄箱、廊下、階段、そして教室……。




 俺の心臓の鼓動は徐々に高まっていき、そしてそれは教室に入った瞬間、最高潮に達した。




 ……教室の中は一見すればいつもと変わらなかった。




 いつもと同じく誰も俺には話しかけてはこない。




 それは変わらない。




 だが、教室に足を踏み入れた瞬間から、俺はクラスメイトたちからの視線を感じていた。




 その時点で既に異常だ。




 そもそも陰キャボッチの俺に対してクラスメイトたちの視線が集まっていること自体がおかしい。




 というか……さっきまで和やかに談笑していたクラスメイトたちが突然よそよそしくなり、教室はしんと静まり返ってさえいる。




 彼ら彼女たちの反応は明らかにネガティブなものであった。




 俺は背中にツララでも突っ込まれたかのように冷や汗をたっぷりとかいていた。

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