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第19話 真衣サイド-02-

 ……えっと……わたしは何を考えていたのだっけ……。




 そう……あの豚ども……いえ唯のご家族のことだ。




 とにかく、唯のご家族の態度には不自然な様子が多くあった。




 だから、わたしは疑っていた。




 唯のご家族は唯のことを言葉ほどには愛していないのではないか。




 いや……むしろ唯のことを邪魔だとさえ思っているのではないか……と。




 栞さんも玲奈ちゃんもわたしと同意見だった。




 けれど、まさか彼女たちが唯を追い出すなんて暴挙に出るとはわたしたちは誰も想定できなかった。




 あんなことを唯にするとわかっていたら、わたしはあの豚どもを放置なんてしなかったのに!




 ……いや……豚どもは言いすぎだ。




 彼女たちは一応まだ唯の家族なのだから。




 処分……いや罰を与えるのは、唯の許可を経てからだ。




 唯は心優しいから、きっとあの豚ども……いや彼女たちにも慈悲を与えるだろう。




 だから本当に悔しいけれど、きっと処分はできないだろうし……。




 いや……それはそれでよいのかもしれない。


 


 すぐに楽になるなんて許されない。


 


 もっとじっくりとじっくりと苦しめて……苦しみもだえさせて……。




 水無月家の総力を上げて……フフ……。




 ……また話しがそれてしまった。




 そう……とにかく、わたしたちは唯とはいつも一緒にいたし、互いに毎日色々なことを話した。




 でも、わたしたちは誰も家族のことだけは唯には言えなかった。




 唯は彼女たちのことをとても好いていたし、他人のわたしたちが分け入る話しでもない。




 今考えればそれは大きな過ちだったのだけれど……。




 それは唯の13歳の生誕祭……いえ誕生日に突然起きた。




 わたしは唯の生誕祭を祝うべく様々な準備をして、ワクワクしながら、学校に行った。




 けれど唯は、その日学校に来なかった。




 そして、そのまま唯は二度と学校に来ることはなかった。




 数日後のホームルームに先生が唯の転校を告げた。




 唯に何が起きたのかをわたしが、知ったのはそれからだいぶ経ってからのことだった。




 唯のお祖父様が亡くなって、彼女たちが唯のことを捨てた……ということを。




 むろんあの女たちは正直に『唯を捨てた』などとは言わなかった。




 ただ唯の希望で遠くの学校に転校したとだけわたしに告げた。




 わたしは当時まだ小学校を卒業したばかりの子供だった。




 だから、不審に思ったけれども、それ以上彼女たちを追求することができなかった。




 わたしはそれでも唯の連絡先や転校先を聞こうと必死に食い下がった。




 けれど、彼女たちは頑として教えてくれなかった。




 事情を知った今ならわかる。




 きっと彼女たちは後ろ暗かったのだろう。




 家族を……唯を捨てたという事実を他人に知られたくなかったのだ。




 結局、わたしは彼女たちに言いくるめられて、ついに屈してしまったのだった。




 後から聞いた話しによれば、わたし以外の子たち……栞さんや玲奈ちゃんも同じ対応をされたそうだ。




 唯がいなくなったことに衝撃を受けたのはもちろんわたしだけではなかった。




 唯は今も昔もいつだって周りの人たちを明るくさせる。




 だから、当然彼の周りには、人が……特に女性たちがいっぱい集まってしまう。




 唯の魅力を知っているわたしからすればそれは嫌だけれど仕方がないことだった。




 その中でも特に唯と仲がよかったのはわたし以外には二人……栞さんと玲奈ちゃん……いる。




 彼女たちもわたしと同じように懸命に唯の行方を聞き出そうとした。




 でも彼女たちもやはりわたしと同じようにまだ子供だった。




 一番年長の栞さんだってまだ14歳かそこらだったのだ。




 当然、限界はある。




 今ならもっとうまいやり方がいくらでもあったと思う。




 けれども、当時子供だったわたしたちには唯の居場所をつかむことができなかった。




 本当は栞さんや玲奈ちゃんともっと協力していればよかったのかもしれない。




 そうすればそれぞれ独自に動くより、効率的だったと思う。




 だけど、わたしたちは唯をめぐって互いを互いにライバル視していたから、そういう協力ができなかった。




 まあ……それは今もそうだけれど……。




 今ならばわたしも大人になったから、少しは妥協できる。




 それに結局のところ、栞さんも玲奈ちゃんも唯の優しさにつけ込んで、近くにいるだけの女性たちだ。




 唯の真のパートナーはわたし以外にはありえない。




 いずれにせよわたしの……いえわたしたちの目の前から唯はいなくなってしまった。

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