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第14話 幼馴染の目が突然虚ろになったんだが……

 真衣のその目には、殺意の波動がありありとこもっていて、俺は自分の身の危険をリアルに感じてしまうほどだった。




 というか「女狐」って何だ。


 


 真衣は超がつくほどのお嬢様だからなのか、普通の話をしていてもときおり自然と難しい言葉を入れてくるから、話がわからないことがあるな。




 い、いやそれよりも……や、やはり……真衣は先程の俺の失礼な態度に相当怒っているようだ。




 そ、それにしても……怖い……。




 た、確かに俺の態度は責められても仕方がない。


 


 だが……何もここまで怒らなくとも……。


 


 俺みたいな陰キャボッチに文句を言われたのが、そんなに悔しいのか……。




「おかしいと思っていたのよ……あんなによそよそしいのも……それにわたしはずっと唯に気づいてほしくてやりたくもないアイドルを我慢してやっていたのに、何の音沙汰もないし……嫌な予感がしていたのよ。唯の周りには子供の時からいつも女狐たちがいた……だから、わたしがいつも排除……守っていたのに……この3年間できなかったから——」


 


 真衣は下を向きながら、ブツブツと小声で何かを言っていた。


 


 やがて、真衣は俺の方を向きなおると、じいーっと見つめてくる。


 


 そして……何故かどんどんと接近してきた。


 


 真衣は、俺の顔の目と鼻の先まで来て、




「やっぱり……唯の……よい匂いしかしない……女狐たちの嫌な匂いはしない……でも……さっきのは……」


 


 と、何かを確認するように鼻をクンクンとしている。


 


 真衣の行動は明らかに変というか異常だった。




 だけど、俺はそのことを深く考える余裕がなかった。


 


 というのも……俺は目の前の圧倒的なリアルに対処するのに精一杯だったからだ。




 ……ち、近すぎる……。


 


 というか真衣の体が俺に密着し過ぎて胸の感触が——。




 それに、真衣の息遣いも聞こえるし、何よりもなんかすごく良い匂いが……。




 ひ、卑怯だぞ。真衣……こんな色気で俺を惑わそうなどと……。




 くっ! た、確かにこういう匂いや感触は現代の技術ではまだ『彼女』に実装することはできない……。




 こ、これがリアルの女性の力だというのか……。




 だ、だが……俺は負けない。




 もう二度と俺はリアルの女性に騙されないんだ。




「か、関係ないだろ」


 


 俺はなんとか目の前の真衣のことを振り払って、そう言う。


 


 その瞬間、俺はあわてていたせいもあり体のバランスを崩してしまい、部屋の中で盛大にズッコケてしまう。


 


 そして、そのはずみで俺が隠していた少しエロ目のラブコメの漫画、アニメ、ゲームなどのコレクションの数々が真衣の眼前に晒されてしまう。




「な……これって……唯……あなた……」


 


 真衣は唖然とした表情を浮かべている。


 


 ふ、ふん……こうなったらもうイチイチ隠す必要もない。




 そもそも別に恥じる必要なんてないのだからな。




 せいぜい軽蔑するがいいさ。


 


 別に俺は今さらリアルの女性に……真衣に気に入られようなんてこれっぽっちも思っていないのだから。


 


 真衣はしばらく無言だったが、




「唯……これはいったい……いえ今はそんなことはどうでもいい……」


 


 と、抑揚のない声で言う。


 


 真衣は、無表情だ。


 


 軽蔑するというよりそもそも興味がないのかもしれない。


 


 当然か……真衣にとっては俺はどうでもよい人間なのだし。




 それに先程と変わって、目つきもだいぶマシに……。




「ねえ……唯……それよりも教えてよ……さっきの女はだーれ?」


 


 ……い、いや……だ、ダメだ……な、何かとても虚ろな目をしている。


 


 これならまだ先程の殺気だった目の方がよかった。


 


 こ、この目で見つめられると、何か俺がとんでもない罪を犯した気分になるのは気の所為だろうか。


 


 まるで……最愛の恋人を裏切った極悪人のような——




「安心して……わたしはよくわかっている。あなたは悪くない。悪いのはいつもあなたに群がってくる女狐たちだもの……フフ……だから、わたしがまたいつものように——」


 


 真衣は虚空を見つめて、訳の分からないことを言いながら、薄笑いを浮かべている。


 


 不味い……何かわからないが、このまま何もしないでいると、とんでもないことが起きそうな気が……いや確信がする。




「あ、あれは……お、俺のAI彼女だ」




 俺は気づいた時には、声を震わせながら、そう言っていた

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