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第13話 『彼女』からの返信を幼馴染に見られた

 というのも、真衣がなぜこんな話しをするのかさっぱり意味がわからなかったからだ。




 だから、最後の方は正直頭に入ってこなかった。




 あまりにも早口だったしな……。




 それに、真衣がこんなに興奮しているところは今の今まであまり見たことがない。




 だから、その様子にただ圧倒されていた。




 だけど、よくよく考えて見ると、徐々に真衣が言わんとしていることがわかってきた。




 真衣が目を爛々と輝かせて、熱っぽく語る姿……。




 その姿はどこかで見たことがある。




 女子がよくやっている……そう……これはマウンティングだ。




 要するに真衣は俺に自慢したいのだ。




 自分のセレブな生活を……。




 そして、俺は真衣のもう一つの狙いに気づく。




 なるほどな……。




 真衣のやつ……わざわざここまで来たのは俺を見下すためでもあったのか。




 俺と真衣とではスペックがまったく違うというのは十分わかっている。




 が……それをあえて俺の家に押しかけて、俺の目の前で言う必要はないだろう。




 まったくこれだからリアルの女性は……。




「……別に俺は今の生活に満足している。ここまで来たのは俺を見下すためか? 3年間も会っていない相手にわざわざそんなことをするなんてだいぶ暇なんだな」




「え? な、何言ってるの——」




「とにかく……俺には関わらないでくれ。もう幼馴染でも何でもないし、俺は昔とは違って、見ての通りの貧乏人だ」




 冷静に言うつもりだったのだが、ついつい辛辣な言葉が口になって出てしまう。




 自分でも思わず驚いてしまったほどだ。




 真衣の顔を間近で見ていると、どうしても我慢できなくなってしまった。




 別に真衣が自慢をしてきても関係ないじゃないか。




 黙ってやり過ごせばいい。




 いつだってそうしてきたのに、なぜ真衣に言われるとこんなにも心が乱れるのだろうか。




 結局のところ、俺はどこかで真衣に期待していたのだろう。




 からかわれているとわかっていても、それでも真衣に何かを期待し、望んでいた。




 3年もあっていないとはいえ、真衣は仲がよい幼馴染だった。




 だから、心の底では真衣は俺とまだ友達でいてくれるのでは……などと叶わぬ夢を抱いていたのだ。




 要するに俺はまた人に勝手に過度に期待してしまっていたのだ。




 そして、その勝手な期待が裏切られたから、俺の心は勝手に傷つき苛ついている。




 実に幼稚な話だ。




 俺は散々学んだはずなのに、未だに同じ過ちを繰り返している。




 俺はまだ大人になりきれていない。




 真衣は黙ったまましばしうつむいていた。




 たぶん真衣は怒っているのだろう。




 当然だ。




 言い過ぎだった。




 明らかに俺が悪い。




 しかし、これで真衣も俺の家から……いや俺の前から消えるだろう。




「そんなの……全然関係ない……わたしはずっと唯の側にいる! 唯がどうなろうとわたしはもう唯から絶対離れない!」




 真衣は不意に手を大きく振って、びっくりするほど大声でそう言う。




 俺は真衣のその態度に内心驚きながらも、




「な、なんで、そんなに俺のことを……」




 と、声を漏らす。




 そう……明らかに不自然だ。




 真衣が俺にこだわる理由なんてどこにもない。




 幼なじみといっても、もう3年間も会ってないのだ。




「そ、それは……唯はわたしにとって……ご、ごめんなさい。と、突然で……う、うまく言えない……このことは……もっと……ちゃんとしたところで言いたい……」




 真衣は急にうろたえてしどろもどろになる。




 なぜか頬を先程よりもさらに赤く染めている。




 耳まで赤い……。




 真衣のその態度は俺の目にはとても不自然に見えた。




 そんなに動揺しなくてもいいのに……。




 ……それにしても怪しすぎる……やはり、真衣のやつ……何かを隠しているな。




「ま、まあ……無理してまで話してもらう必要はないけど……その……ただいい加減に演技はやめて、正直に話してくれないか? 何か目的があるんだろ? それとも俺をからかいたいだけなのか?」




「え……いったい……な、何言ってるの? そんなことわたしがする訳ない! ねえ……唯、わたしの話を聞いてよ! わたしはただずっと唯の側に——」




「もういいから……そういう芝居は——」




「演技なんかじゃない。わたしは本当に唯のことを——」




『唯くん、返信遅いけどどうしたの?』




 とその時、俺のスマホから媚びるような女性の甘ったるい声がした。




 学校ではさすがに音声を出す訳にはいかなかったが、音声付きでチャットする機能が『彼女』には搭載されている。




 当然、家ではその機能をフル活用しているのだが……。




 その瞬間、真衣の顔が凍りついた。




 そして、その顔はみるみる豹変し、恐ろしいほど怖い顔を……というか殺気立っている。




「唯……今のは……何? というか……誰? というか……何なのその女狐は?」




 真衣は先程よりも更に早口でそうまくし立てる。




 そして、両手を腰にあてて、俺をじっと見つめ……いや睨んでくる。

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