7話 おこめくんのオリジン『おこめリジン』
ま、ままままずはおちつこう。こめつぶのかずをかぞえておちつくんだ……いち……に……さん……ああおわらねぇ!!
「オイオイどうしたおこめ?うまく情報を飲み込めてないみたいだなぁ?」
く、くそぅちゃーはんくんめ!ぼくをこけにしやがって!
「お前はミスをしたんだぜ?食生を賭けて否定してきた漢字が……今まさに口説き落とそうとしている女の子と同じ中国産だったなんてなぁ?」
うう……そんな……そんなぁ……
「お前はモテるために平仮名だけを使って生きてきた。全く皮肉だよなぁ……その拘りが今まさに!モテられない要因になるなんて」
くっ……ぼくは、ぼくはまたしっぱいするのか……"あのとき"のように……!
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「あっなまたまごおねぇさーん!おはよう!」
「あら、おこめくんじゃない。おはよう」
ぼくはきんじょにすむ『なまたまごおねぇさん』がだいすきだった。かのじょはぼくよりとしうえで、おいしそうだったし、ぼくをすきともいってくれた。
──ぼくの、はつこい。
「私、漢字を使う堅苦しい男嫌いよ」
「で、でも僕学校で習った漢字、使いたいよ!」
ぼくはしょうがくせいになり、かんじをおぼえたのがうれしくて、おねぇさんはいやがったけど……たくさんつかった。でも、それがいけなかったんだ。
「なまたまごおねぇさん。は、はずかしいけどぼく、さいきんひらがなしかつかわないでせいかつしてるんだ……あ、あの……ぼくと……たまごかけごはんに……」
しょうがっこうをそつぎょうしたぼくはそのあしでおねぇさんのところへむかった。
ひらがなをつかうのも、ちゅうがくでびゅーのたいみんぐならいいかなとおもって、それをつたえようと。
「もう遅いのよおこめくん……もう……すべてが遅すぎたの。私、もうあなたと卵かけご飯にはなれないの……」
「なっ!?どうして……!!」
「私、もう新鮮じゃないの……生食用としてはいられないの……!」
「そ、そんな!そんなことって!!」
そう。おそすぎた。ぼくはもっとはやく、もっと、もっとはやくかんじをすてるべきだった。かんじをすてて、おねぇさんとたまごかけごはんになるべきだった。
「それに私、結婚するの……」
「……………………え」
ぼくがひらがなおんりーをはずかしがっているあいだに、おねぇさんはおみあいをしていたんだ。
「由緒あるケチャップ家のチキンライスさんと結婚するの……私、オムライスを作るのよ!」
「いや、いやだよなまたまごおねぇさん!!」
「もうその名前で呼ばないで!私はただの『たまご』よ……だからあなたとは……ずっとさよなら」
「まって!まっておねぇさん!!!」
ぼくはおねぇさんをおいかけた。おいかけて、おいかけて、でもまにあわなかった。
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「そ……それでも……それでもぼくはひていしたい!かんじを!ひていしていきていきたい!ぼくじしんのしょくせいを!──なまたまごおねぇさんにはじないものにしたい!!」
「愚か者が!漢字が使えないなんて不便じゃないか!弱い食べ物ってのはいつもこうだ。ちっぽけなことに拘って……機会を逃す。本ッ当に!頭にくる奴だ!!」
そうだ……ぼくはなまたまごおねぇさんにちかったんだ!ぼくは!ぼくはひらがなだけをつかうんだああああああああ!!!!
「という訳で!」
「ぼくとちゃーはんくん、どっちとちゃわんいりしたい???」
いままでひとこともはっさなかったらーめんちゃんが、はじめてくちをひらいた。
「いや、どっちもナーシ。あたしィ、一人で生きるんで」
「えっえっえっ」
「ラ、ラーメンちゃん??」
「あのさァ、まず冷静に考えて欲しいんだけどォ……あたしィ、主食。しかも味濃いめ。あたしをおかずにご飯や炒飯食べるなんてありえないっしょ」
「い、いや、人によってはそういう食べ方も……」
「ハァ……そういう奴らはセンス無ェ〜つってんの。ラーメンはラーメンだけで楽しむの。じゃ、あたしはこれで」
「えぁっ!そんなぁ〜」
「ま、まさか彼女が過度に拘りの強いタイプのラーメンだったとは……おこめ、今回の勝負はおあいことしよう……」
「そ、そうだね。おつかれ、ちゃーはんくん」
「ああ、またなおこめ」
ありがとう読んでくれた人、ありがとう2023年
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