24話 時空跳躍/タイムトラベル
目隠しが外され、水混ぜご飯くんの視界が開ける。光が瞳を穿き、痛みが刺した。
「ううっ……まぶしっ!」
「時空管理局の場所は極秘でな。協力者にも明かすわけにはいかないんだ」
「ぐー〇るまっぷにものってない?」
ちゃーはんくんは無視して歩き出す。水混ぜご飯くんも続く。
ドアが自動で開く。入り、振り返ると左右にクッキーくんとビスケットさんが居た。ドアを押さえている。
どうやらドアを開けてくれたのは彼らのようだ。
「じどうどあがかり?」
「そうだ」ちゃーはんくんは歩く。
「へんなの」
言うと、香ばしい中華料理は振り向いて捲し立てた。
「プロの仕事だ。厳しい試験を突破しないとなれない職だぞ。敬意を払え」
「えっえっ」
「俺は五度落ちた」
「えっえっえっ」
更に遠くへ歩く。時空管理局の内装はなべてシンプルであり、悪く言えばつまらなかった。水混ぜご飯くんが三度目のあくびをした頃、最後の扉が開く。
「おー、むらさきのらいとあっぷ。じくうかんりきょくのだんすふろあ?それにしては……おんなのこがいないなあ」
天井から吊るされた複数の照明が幾何学的に照らすアリン・デレンのSF作品風の空間。
通常の食べ物であれば思わず踊り出してしまいそうな雰囲気がそこにはあった。
グレンディア・ファルダーが尻尾を巻いて逃げ出す程度には官能的で、尚且つ享楽的。この空間を初めて目にした者は皆、己が脊索動物門でなかったことに感謝した。
実際のところ、この照明は例の物を有害な光干渉から守るために設置されたものだが、結論、水混ぜご飯くんの目にダンスフロアとして映るのも無理のないことであった。
「違うわボケ。見ろ。これが『時空跳躍機』だ」
ちゃーはんくんが示した先に、それは鎮座する。
「そうじき???」
「時空跳躍機。要はタイムマシンだ」
事実、それは掃除機と同様の形状をしていた。二輪の本体から蛇腹のホースが伸び、延長管の先にはノズルがあった。
「私は床の埃を吸うために生まれました」とでも言うように、時空跳躍機は紫の光の中で佇んでいた。
「確かに外見は掃除機そのものだが、中身はまるで違う。噂によると、掃除機の形状が最も時空跳躍に適していたらしい」
「どうゆうこと????」
「もう一つ、デ〇リアンとの差別化という説があるが俺はこちらの方が有力だと思う」
「もういいよ。そろそろどくしゃもせつめいにあきてきたころだ。さっさとかこにおくって」
「そうだな。では」
ちゃーはんくんは、時空跳躍機の持ち手に存在するリモコンのスイッチを押した。
「ピッ」という無機質な音がしたあとは、轟音だった。巨大なモーター音と風を裂くようなノイズ。
それは朝、子供番組を観ていた我々を邪魔する親の家事。掃除機をかける音に似ていた。
家族のために面倒な掃除をしているのに「うるさい」と文句を言われる親も大変である。
「うわあああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!」
水混ぜご飯くんは掃……時空跳躍機に吸い込まれた。
あざます
 




