19話 虚空に響く最強の力
「水混ぜご飯から戻れないなんて……茶碗入りできないなんて……有り得ない……有り得ないいい!!」
高層ビルの立ち並ぶ都市の中心で、僕は叫んだ。絶叫が天を突き、僕を元のおこめくんに戻してくれる……なんてことはなかった。
つまり天は僕の敵ということだ。許さない。
「なにあれ〜」
どこからか声がした。口調から、僕を嘲笑っていることは明白だった。
声のありかには、キウイの女の子がいた。
「やめときなって」
隣の男が制止する。彼はチョコだ。キウイにチョコを合わせるなんてどうかしている。
「今までの僕ならキウイと茶碗入りしてあげるところだが、最早お前に価値はない!消えろゲロマズが!」
「なに?なんか文句でもあんのか!」
くっ……僕に盾突こうってのか!
「ゲロマズ?お前にだけは言われたくないね!なんだその格好、水混ぜご飯か!」
「なっ……ああ……ああ……ああああああ」
ゆ、許さない!その名で僕を呼ぶなんて!許さない!
「僕はおこめくんだあああああああ!!」
怒りに震える身体。力が入り、水が飛び散った。
「ぎゃあ!」
キウイは悲鳴を上げて飛び退く。まさか……
「僕の体液が嫌なんだね?うひひ……」
そうして僕は、ところ構わず体液を振り撒いた。
「みんな……みんなが僕から逃げていく!僕は最強だ!最強の力を手に入れたのだ!」
悲鳴と狂騒に酔い、気分は興奮を極めた。食べ物警察官が現れようと、僕の体液が僕自身を守り、彼らの発砲は無意味だった。
気づけば空には橙色の幕が降り始めていた。
「ハァ……ハァ……随分遠くに来てしまったな。都会とも田舎ともつかないやや栄え気味の住宅街に来てしまった」
「お、おこめくん……?」
「なんだァ?僕にシャビシャビにされたいのかァ……あっ!?」
「変わったのね……もう、おこめくんとも呼べないのかしら」
「な……なまたまご……おねえ……さん」
「私はたまごよ。昔の名前で呼べないのはお互い様ね」
なまたまご……いや、たまごお姉さんは言った。夕陽を背に微笑む彼女は、相変わらず美味しそうだった。
あざますm(_ _)m
次は15日に投稿します




