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おこめくんは茶碗入りしたい  作者: 高端 朝
ぱりぱり編

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12/27

12話 調理済み。故に調理不可

「なんだとォッーー!!」


驚愕するのりちゃん。おにぎりにしようとしていた白米が、その前に炒飯になってしまったのだから仕方ない。


「ふはは。ざまぁみろ!」


ここは繁華街。米を炒飯にする方法などいくらでもあるのだ。


「クッ……まさかそんな……炒飯おにぎりという手もあるが、そんな気色の悪い食べ物を認めるなど愚の骨頂。炒飯死すべし滅ぶべし」


「おい!いいすぎだろ!」


「まさか貴方がそんな愚かな行動をとるなんて想像もしていませんでした。ワタシの負けです。こうなったらごま油香る貴方を消す……しかないですね」


迫るのりちゃん。武器の類は持っていないが、殺気のサイズがコ〇ダ珈〇店の食べ物くらい大きい。


「はっ?まて!おまえははくまいでおにぎりをつくりたかったんだろう!?」


「切り替えたんですよ、おこめ……いや、炒飯さん。ワタシの目的は今、貴方を消すことに切り替わった」


言い終わり一気に加速するのりちゃん。炒飯は顔を面白いくらい歪ませてクソビビっている。


「ぎゃああああああああ」


「ぱりりっぱりりっ、心地のよい悲鳴ですね」


「死にたくないいいいいいいいいいい!!!」


漆黒の海苔ボディが炒飯に直撃する……かに思われた。


「ぱり?」


瞬間、のりちゃんが縦に割れる。


分断されたのりちゃんの体は炒飯を通り過ぎ、数メートル先で倒れた。


「ぱ……りりっ……ぱりっ……りっ?」


「ふーっ、なんとかなったね!」


「ぱりっ!?貴方は!?」


現れたのは純白艶やかボディのナイスガイ、おこめくんだった。


のりちゃんは状況を飲み込めず、「ぱりっ?ぱりりっ???」としか発せていない。


「……ったく、遅ぇんだよおこめ!」


「あはは、きみのきょうふのひょうじょう……みものだったよちゃーはんくん!!ぎゃはははははははははははははははははははははははははははは!!!はは!!!!」


「テメェ、マジに炒飯にしてやろうか!」


「きもちのわるいことをいうな!」


「何故貴様らはそんなに炒飯を気持ち悪がるんだ…………」


「ぱりっ、ぱりりっそういうことでしたか。全く、『ライス・オブ・ライフ』のメンバーとして、ワタシもまだまだですね」


そう。のりちゃんはちゃーはんくんを知らなかった。ちゃーはんくんを『炒飯になったおこめくん』だと偽装し隙を作り、そこを叩いたのだ。


背後からの攻撃でのりちゃんは割れ、戦闘不能。既に己の敗北を認めたようだった。


「はぁ、疲れた。俺は帰るぞおこめ。まだ日課が終わっていないんだ」


「ぼくははんかがいでおんなのこひっかけてくるからまたね!」


こうして、おこめくんは食生史上一番の危機を乗り越えた。太陽は真上から彼らを照らし、勝利を祝福するかのようだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ぱりっ……クッ……体が真っ二つだと、移動しにくいですね……ぱりりっ……全くお笑いだ」


「おや、のりちゃん。いつにも増して素敵な格好ですね」


「ぱっ、黄色パプリカちゃんでしたか。ぱりりっ、負けてしまいましたよ」


もはや煽りを返す余裕もなく、自嘲気味に笑うのりちゃん。黄色パプリカちゃんも微笑む。


「助けていただけますか?この通り、動きづらいもので」


それを聞き、黄色パプリカちゃんは更に強く笑った。


「あはっ!はぁ……もしかして勘違いしているんじゃありませんか?」


のりちゃんは意味がわからないと首を傾げる。


「『ライス・オブ・ライフ』は個々人自らの調理法を至高とする組織。同じ所属なだけで仲間ではない」


言いながら黄色パプリカちゃんはのりちゃんを持ち上げる。手の中の漆黒へ微笑みかけ、全身を確認する。


「……待ってください、貴方まさか!」


「そうですよのりちゃん。貴方は『海苔巻き煎餅』になるんですよ」


歩き出す黄色パプリカちゃん。ジタバタと抵抗するのりちゃんの努力が実ることはない。


悲鳴は昼時の繁華街の活気に吸われ、誰も彼女の存在に気づくことはなかった。

ありがとうございました

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