10話 ライス・オブ・ライフの刺客
あさ、めがさめる。いや、せいかくにはねむろうととじたまぶたをひらいたといったほうがただしい。
「ねむれなかった……」
きのうまちのいたるところできいた「ぱりっ」というおとがあたまのなかでこだまする。
あれはなんだったんだろう?
「きょうはそとにでるきぶんじゃないな。いえでやすもう」
つぶやいて、ふとんからでる。ふとんはじめっとしめっていて、きょうふにたくさんのあせをかいたことにいまきづいた。
「はぁ……」
ためいきをついて、かーてんをあける。すると、まどのそとはまっくらだった。
「ぱりっ」
「ぎぃやあああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」
おぞましいおととともにくろいなにかがめにとびこんできた。
そとがくらいんじゃあないぞっ!なにかが、くろいなにかがまどに“はりついて”いるんだっ!
いそいでとびのく。するとくろいなにかはまどをあけ、へやにはいってきた。
「ぱりっ」
「お、おおおまえはだれだっ!!」
といただすとくろいなにかがくちをひらいた。
「ぱりりっ。ワタシはのりちゃん、みてのとおりののりでごさいます」
そう。やつはしょくようのそうるい、『のり』をかこうしたいわゆる『やきのり』だったのだ!
「ぱりっぱりりっ。お迎えに上がりましたおこめくん。貴方は栄光ある『ライス・オブ・ライフ』による調理対象に選ばれたのですよ」
「『らいす・おぶ・らいふ』だって?なんだそのそしきは!」
「平仮名ではごさいませんよ、ぱりりっ。ワタシはライス・オブ・ライフの幹部。貴方を『おにぎり』にするため馳せ参じました」
「なっ、なんだって!?ぼくをおにぎりに!?」
そんなっ!?そんなおそろしいことを!?
「ふざけるなっ!ぼくはおちゃわんにはいらないたべものになるつもりはない!かえれおとくようやきのりめ!」
「強情な方ですねぇ。おにぎりになることは全米が泣くほど素晴らしいことなのに……仕方ありませんね……では参ります!」
そういってのりちゃんはつっこんできた!
「うわぁ!」
なんとかかいひしてへやのとびらをめざす。
ここからにげないと!
「させませんよ、ぱりりっ!」
「ぎゃあ!」
のりちゃんがみずからのからだをすこしやぶり、はへんをなげてきた!
そしてそれはどあのぶをめざすぼくのてにつきささる!
「いたぁい!」
「ぱりりっぱりりっ」
いたみにふるえるてをおさえ、なんとかいえをでる。
しかしながらのりちゃんのこうげきがやむことはなく、ぼくははしった。
「はぁっ……はぁっ……!にげなきゃ!にげなきゃ!おにぎりになんてなりたくない!」
はしってはしって、ころんだりしながらはしって、ひとつのおみせをみつけた。
「こ、ここにかくまってもらおう!」
おみせにはいると、あさのかいてんじゅんびをしているたべものがいた。
「き、きみはっ!」
「おや?まだ店を開いてはいないのですが……」
「きいろぱぷりかちゃん!」
そう。ここはせんじつはだをやこうとおとずれ、けっきょくやめたせんべいやだったのだ!
「こ、このさいきみでもいい!たすけて!」
「どうかされましたか?」
きいろぱぷりかちゃんはふだんのふんいきをこわさずおちついたようす。
「『らいす・おぶ・らいふ』ののりちゃんとかいうやつにおそわれたんだ!」
「ふむ、『ライス・オブ・ライフ』ですか……」
いわかん。きいろぱぷりかちゃんのことばにぼくはいわかんをおぼえた。
なんだ……?いわかんのしょうたいはなんだ?
わかったぞ……。
「…………いま、かたかなをつかったの?」
「おっと、私としたことが……」
ぼくは『らいす・おぶ・らいふ』がかたかなめいのそしきであることをつたえていない。
にもかかわらずきいろぱぷりかちゃんはかたかなをつかった。
「きいろぱぷりかちゃんまさか!」
「そう。私こそ『ライス・オブ・ライフ』幹部、『黄色パプリカ』です」
おそろしいことに、ぼくが『らいす・おぶ・らいふ』のしかくからのがれようとはいったおみせのてんしゅが、まさに、『らいす・おぶ・らいふ 』のかんぶだったのだ!
「そんなっ!」
「ですがご安心ください。私はのりちゃんのような野蛮食ではないんです。おにぎりなどという下品な食べ物に貴方を調理するようなことはありません」
「ほっ……」
あんしんした。のりちゃんがいかれていただけで、そしきそのものはあんぜんなんだ!
とおもったのもつかのま。つぎのきいろぱぷりかちゃんのことばに、ぼくはせんりつする。
「貴方はおにぎりではなく……煎餅になるのが相応しい」
「えっ……?」
いつのまにかぼくをかこんでいたたべものたちにとりおさえられ、ぼくはひきずられた。
「やっ!やめろぉ!」
ぼくをひきずるのはこのおみせでやかれたとおもわれるせんべいたち。みないちようにほうけたひょうじょうをしていて、いしがないことがわかった。
みんな、きいろぱぷりかちゃんにやかれ、せんのうされたのだ。
「たすけて!たすけて!」
ぼくはさけぶ。だれにでもいいからとどいてくれと、さけんだ。
「とぉーーーう!!」
「ぎゃん!」
ねがいがとどいたのか、おみせにだれかがにゅうてんし、せんべいたちにとびげりをくらわせた。
かいほうされたぼくはきゅうせいしゅのかおをみる。
「えっ……!」
「おい大丈夫か?……ゲっ!」
そのたべものは、
「ちゃーはんくん!?」
「おこめ!?」
そう、このまえぼくとなんぱたいけつをおこなったちゃーはんくんだった。
読んでくれてサンキュな☆




