決してお前を愛さない
わかってください。
あなたのことがすきなんです。
わかってくれますよね。
あなたもわたしのことがすきなんですから。
とつぜんこんなことをしてごめんなさい。
でもこれは、わたしとあなたがむすばれるためなの。
いまはわからなくても、きっとわかってくれるひがくると、しんじています。
鏡だらけの部屋。
たくさんの鏡にうつっているのは、なにもない部屋に拘束された俺。
そして、そんな俺に食べ物を差し出している女だ。
おかしな部屋の中で生かされている俺には、食欲を満たす余裕などない。
もしも神様がこの瞬間に俺の望みをかなえてくれるというのなら、ここからの解放だけを願うだろう。
「食べないとダメですよ、はいあーん」
目の前の女が長いパンを口元に持ってくる。
けれど俺は顔を背けた。
何が入っているかわからないのに、口にできるわけがない。
「ここから出してくれ」
笑顔を浮かべていた女は、真顔になった。
そして、何も聞かなかったかのような顔で、パンを引っ込めて部屋を出ていく。
またか。
きっと従順になるまでこれを繰り返すつもりなのだろう。
弱ったところで親切にして、相手の心につけこむつもりなのだ。
そうはなってたまるか。
俺の気持ちは変わらない。
決してお前を愛さない。
耐えていればきっと誰かが俺の失踪に気づいてくれるはず。
俺は女が出ていった扉をにらみつけて、心を強く保つことにした。
へやからでたわたしは、しかくいそれをちぇっくする。
またいろいろなところかられんらくがきてる。
おともだちがたくさんいるひとってたいへんね。
でもあのひとは、それだけみりょくてきだから、しかたない。
だいじょうぶ、ぜんぶうまくいくように、わたしがいろいろやっておきますね。