月明かりの下で
あたしたちは、1人1人に目の前に饗された料理を口にしていく。ローストビーフのカルパッチョ、キノコのスープ、白身魚のムニエルとそれに合わせたという白ワイン、そして牛ヒレ肉のステーキと赤ワイン。今まで食べた中でトップクラスに美味しい。あたしたちは口数少なく夢中で食べていたけど、ここで赤ワインをクーッと飲み干したダンが口を開く。
「これで後はデザートだろ。食い足りないからなんかつまみとエールが欲しいな」
「そうだよね」
アストリアさんがそう言うと、横を向いた彼の隣にウェイターさんが来て、何言か会話すると、チーズの盛り合わせと人数分のエールが運ばれてきた。あたし結構お腹いっぱいだからエールはきついって。
「じゃ、もう一回。アストリアにかんぱーい」
ダンが音頭をとっていつもの宴が始まった。
「大丈夫かい? もしかして飲み過ぎた?」
店の外で壁に背もたれて、夜風にあたっているあたしに、アストリアさんが話しかけてくる。
「んーん、ただ体を冷ましてるだけ」
本当は腹パンで動けないだけだ。話をそらそう。
「それにしても綺麗な月ね」
あたしはもう少しで満月な月を見上げる。あたしのお腹も同様あとすこしで満月だ。
「そうだね。けどレイチェルの方がもっと綺麗だよ」
見上げると、アストリアさんがあたしを見つめてくる。ベタだ。こんなセリフ普通ははけない。けど、彼なら違和感がない。サラサラの金髪がそよぎ、その深い青い瞳に吸い込まれそうになる。その横には月が輝き、まるで小説のワンシーンにいるみたいだ。やばい、心が持ってかれそうだ。あたしは目を逸らす。なんか、なんか話さないと。
「ありがとう。ご飯美味しかったわ。ところで、アストリアさんって、どうしてこの街に来たの?」
アストリアさんはあたしから少し距離を取って横に座る。
「私は、強くなるためにここに来た。そうは見えないかもしれないが、私の家は自慢する気は無いんだが、俗に言う貴族のようなものだ」
いやいや、見たまんま貴族だから。
「私の家は特殊で、家督は生まれた順番じゃなくて実力で決まる。野蛮に見えるかもしるないが戦いに強い者が継ぐんだ。私の上には兄が2人いて上の兄が家を継いでるんだけど、兄が即位した時はまだ私は幼かった。それから私は兄たちを超えるべく鍛えつづけている。だが、まだまだ足りない。しっかりと実践経験を積んでより強くてなり兄たちを倒すつもりだ」
ん、即位って言わなかった? 本人は気付いていないみたいだけど、言い間違い? それとも小国かなにかの王子様なの?
「それで、家を継いでどうするの?」
「もし、兄を倒して家を継いだら、この世界の人達が少しでもより幸せに生きていけるようにしたい。今の私では自分の両手が届くところしか変える事はできない。領地には沢山の人がいる。その沢山の人に協力してもらえば、より多くの事ができるからね」
見るとアストリアさんは、キラキラした目で月を眺めている。そしてあたしの方を見て微笑む。わー、見た目だけじゃなくて中身もイケメン……
「おいおい、お前たち風邪ひくぞ」
ダンが店から顔を出す。あたしたちはそれから夜が更けるまで楽しい時間を過ごした。
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