ディナー
「今日は、私に奢らせて下さい」
あたしたちは、アストリアさんの言葉に甘える事にした。
ここ迷宮都市は、3つの壁に囲まれていて、1つ目の壁の中には、冒険者ギルドの建物墓石と、魔道士ギルドの建物の塔、それと各種神殿や商業施設などがあり、いつでも有事の際に壁の扉を閉めて隔離出来るようになっている。そして、2番目の壁の中には評議会の議事堂、学校、兵舎、貴族の屋敷などがあり、基本的に裕福な者が住んでいる。ここに住居を構えるのは一流のステータスで、この街にいる者はそれを夢見ている。そして、3番目の壁の中は一般的な市民が生活している。そして、壁の外には比較的貧しい者や大通りを離れるとスラム街が広がっている。
そして、アストリアさんが選んだのは2番目の壁の中の大通りから少し入った所にあるお店。料金的には、普段使いには高級だけど、なんか特別な事があった時に使うようなお店だった。
「それでは、リーダー、乾杯の音頭をお願いします」
アストリアさんがダンに軽く頭を下げる。席について、スパークリングワインがあたしたちの前に注がれる。おお、いつもはエールなんで新鮮だ。
「いや、今日はお前の奢りだし、お前が主役だろ」
ダンは軽く手を振る。若干動きがぎこちない。スパークリングワインに気圧されてると思われる。ダンは農家の三男坊で、多分テーブルマナーに詳しくない。まあ、あたしはなんだかんだで神殿で学んでるから。バルとリコッタも若干キョドっている。
「それでは、私たちの素晴らしき出会いに乾杯」
「「「乾杯」」」
あたしたちはグラスを軽く当てて、口に含む。うわ、ナニコレ。エールと違って滑らかな舌触り。甘くないのに甘いようないい意味で変な感じの味だ。あたしはワインは嫌いなのにスッと飲める。けど、頬がカーッと熱くなる。
そして料理が運ばれてくる。あたしたちは料理名をみても訳がわからなかったので、アストリアさんに一任した。
「ハハハッ、どうやって食べればいいんだ?」
バルが困っている。あたしたちにそれぞれ出された料理を挟むようにナプキンにナイフやフォークが乗っている。彼はいつでもなんでもフォークをぶっ刺すして食べてるけど、ここではそれは似つかわしくないと思ったんだろう。見た目は野人っぽいけど空気は読める人だから。
「そうですね、基本的には外のシルバーから使っていけばいいんですけど、気にしなくていいと思いやります」
アストリアさんがバルにこたえる。やっぱり多分このような人は貴族だわ。よくあたしたちの仲間になってくれたものだ。
「私たちはみんなで食事を楽しみに来たのですから、大事な事は楽しむ事です。マナーは一緒にいる人達が不快に思わなければ問題ないとおもいますよ」
おお、なんて大人なんだろう。マナーについて説明すると、いけ好かなくなりそうなのに、上手く場を和ませている。アストリアさんは、見た目だけで無く、中身もイケメンなのね。あたしたちは料理に手をつけ始める。
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