白馬に乗った王子様
「はい、喜んでご一緒しましょう」
アストリアは普通の女性の誘いだったら相手に不快感を与える事無く丁寧に断っただろう。けど、目の前の女性の頼みを断る事はできなかった。銀髪緑眼、若き日のアストリアの母の肖像を美化したようなその姿に彼は圧倒されていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おっ、あいつなんていいんじゃないか?」
ダンが顎で示したのは1人の男性。ギルドのテーブルに1人でついている。今まで見た事が無い人だ。なぜそう断定出来るかというと、その風貌は群を抜いている。美男子、その言葉では言い表せないような、神々が作った奇跡がそこにいた。あたしは少し見惚れてしまう。
「え、ダン、あの人を誘うの?」
なんて言うか、冒険者というか、王子様って感じだ。多分仲間もいるはずだし、あたし達が誘ってついてくる訳がない。
「ああ、あの物腰間違い無く強い。荷物の量から見て、間違い無く今はソロだな。多分、この街に着いて間もないんだろう。そういう男がここにいるって事は十中八九仲間を探している」
「ガハハハハッ。奴は騎士、我々のパーティーは一通り職業は揃っているから、騎士がさらにはいっても問題ない、で、誰が声をかけるか?」
バルはもう彼が仲間になった気でいる。気が早いなー。
「そりゃ、レイチェルに決まってる。レイチェルに誘われてノーと言える男は居ない。いるなら間違い無く変態」
あたしが誘ってダメだったら変態ってどういう事だろう。それなら巷は変態ばっかだよ。なんかリコッタってこういう話の時だけよく喋る。
「じゃ多数決だ。レイチェルがいい人?」
「「「はーい」」」
あたし以外全員挙手。かくしてあたしはイケメンさんをパーティーに勧誘する事になった。
あたしはイケメンさんのテーブルに近づく。あー、なんかこれって逆ナンみたい。違う違う、パーティーに勧誘するんだって。けど、今までの人生で聞き込みとか以外で知らない男の人に声かけた事ないし。そう思うと、なんか心臓がドキドキしてくる。決して彼がイケメンだからじゃなくて、こんなの慣れてないからよ。
『ただの勧誘! ただの勧誘!』
あたしは自分に言い聞かせる。近づくと彼が顔を上げる。透き通ったサファイアのような瞳にサラサラな金色の髪の毛。あたしはつい見とれてしまう。王子様、白馬に乗った王子様。陳腐だけど、あたしの頭に浮かんだのはその言葉だ。引き返そうかな……けど、ここで引き返したらただの変な人だ。あたしは勇気を振り絞る。
「あのう、もしよろしければ、あたしたちのパーティーに入りませんか?」
よし、震えずに言えた。これで断られて終わり。彼とあたしはしばし見つめ合う。こんな素敵な人と付き合える人って幸せなんだろうな。
「はい、喜んでご一緒しましょう」
え、何て言ったの。オッケーなの? あたしは自分の耳を疑った。
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