大きな手
「なにそれ、まじ手なの?」
ジューンの広げている手にリコッタが合わせる。リコッタ、赤ちゃんの手に見える。逆にジューンの手はお父さんの手って感じ。そういえば、人見知りのリコッタがもう慣れてる。昨日のおんぶのせいだろうか? あたしもおんぶしてもらえばよかったかな? いや、二人おんぶはジューンは出来るかもしれないけど、真ん中になったら吐きそうね。
あたしは少し喉を水筒で湿らせる。こまめに水を飲むのは大事。代謝が良くなって太りにくくなるらしいし、喉にもいいらしい。よく健康本とかでこまめに適度水を飲んだらいいって言われてるけど、そのこまめと適度って何よって思って生きてたけど、昔知り合った歌姫があたしに答えを教えてくれた。まあ、彼女なりの方法だけど、歌い手に代々伝わる秘伝って言うからいただいた。それで本当かどうかわかんないけど風邪もひきにくくなるらしい。だいたい一時間に一口、約30㏄くらい飲む。それだけでなんかあたしもお肌のハリがよく、食べても太りにくくなったような気もする。風邪もあんまひいてないような。ちょっとおトイレが近くなるのは難点だけど。
リコッタはキラキラした目で、まじまじと手を見ている。そして、手を外し。
「カワテブクロみたいね」
「ぶっ」
あたしは飲んでた水を噴き出す。ぶっ込んだわね。リコッタ。可愛い顔して心はドブかよ。もうジューンの手が『カワテブクロ』にしか見えない。ちなみに『カワテブクロ』とは、この前街でやってた『愉快な海の生き物展』で見た、なんとも言えない形のヒトデさんだ。
「そうか、まあデカいもんな。それに固いしな」
あ、ダンが後ろを向いて笑ってる。我慢してるみたいだけど、肩が動いてるわよ。まあ、ジューンが『カワテブクロ』なんか知ってる訳ないし。けど、微妙な事言ってるわね。デカいし……
話、逸らさないと。さすがにジューンでも『カワテブクロ』の真相を知ったら怒る。
「本当、大っきいわねー」
あたしもジューンの手の前に手をかざす。『カワテブクロ』にしか見えなくなって触れるのはためらってしまった。
「ちょっと握ってみてよ」
あたしは拳をつくる。
「ああ」
ジューンも拳をつくる。その親指はしっかり中指についている。殴り方を知ってる拳だ。殴り合いした事やものを殴った事が無い人に拳を作らせると、親指を人差し指の上に置いたり、酷い人は親指を伸ばしたまんまだったりする。そういう拳で殴ったら当たり所が悪かったら指を脱臼する。拳を握る時のコツは小指から握り込んで中指の所で親指で握り、当たる瞬間に強く握る事。
「格闘もやってるのね」
「当然だ。無手でも戦えないと騎士なんかやってられねー。乱闘は日常だったからな」
坊ちゃん騎士では、武器が無いと戦えない人もいるそうだ。ジューンってまさに叩き上げなのね。
「そろそろ行くぞ。今日は次の次のエリアまでは行きたい」
ここの迷宮はだいたい五層毎に構造、魔物の種類がごろっと変わる。それをエリアって呼んでいる。次の次、地下十一層まで行くつもりみたい。それなら急がないと日が暮れるわね。
水をちょびちょび飲むのは、私の逆流性食道炎対策であったりもします。いいですよ。
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