匠の手
「ジューン、手を見せてくれるか?」
ダンが座ってるジューンに問いかける。
ここは安全部屋。数階層に一つくらいある噴水がある小部屋。その縁にみんな座って休憩してる。たいして誰も疲れてはいないけど気は張ってたから休憩は重要。
部屋の真ん中には丸い池の中央にお魚をかたどった噴水があり、水を真上に勢いよく噴き出している。にょろんと髭を生やした口を開けたお魚は、東方の鯉というものらしい。その鯉という魚は川を遡って登竜門という門をくぐると竜になるという伝説があるらしく、この迷宮には幾つかの噴水に鯉の彫刻が施してある。噴水の水には特殊な効果があるものもあり、この迷宮には知られてるだけで、怪我を回復するポーション、魔法を生み出す力、マナを回復するマナポーション、毒を回復するもの、かたやスリップダメージの毒や麻痺毒などはた迷惑なものもある。けど、噴水彫刻のここでのルールを知ってれば未知の噴水でもだいたい内容を推し量れる。毒には蛇とかサソリとかナメクジとか人に嫌われがちな生き物が多いし、逆に回復系は乙女や天使など可愛い系が多い。お魚さん系はだいたい水だ。あと、幻のドラゴン噴水彫刻もあるらしい。目撃情報があるだけで、なんの効果かは知られてない。いつかなんの液体か試してみたいものね。さすがにドラゴンになったりはしないはず?
あたしは鯉の彫刻をずっと見てたんだけど、その方向にはジューンもいる。さっきジューンと目があったけど、見てたのは鯉。けど、勘違いされてないわよね。鯉なだけに。恋してなんかいないわよ。
無言で差し出したジューンの手のひらにダンが手のひらを当てる。なんか腐の薫りがするけど、ダンは絶対違うわよね? リコッタがニヤけている。
「お前、手デカいな」
ダンよりジューンの手は更に大きい。ダンの手ですらグローブみたいなのに、なんか化け物の手みたいだ。あたしは立って近づいてつい眺めてしまう。オーダーメイドじゃないと入る手袋なさそうね。置いてる手甲も一品物っぽいし。
ジューンの手のひらは綺麗だ。とは言っても小指の付け根にはタコができてるけど。なんか物語とかではよく、武器の達人とかの手はタコとマメでゴツゴツしてるとか表現されてるけど、それは実際に扱った事がない者の言葉だ。本当に習熟した人の手は綺麗だ。ジューンの手みたいに。握る時に無駄に力まないから、手の皮は厚くはなるけど最小限のタコしかない。あと、余談だけど、タコやマメを作りにくくするのにはコツがあって、手に汗をかいたらまめに拭う事だ。湿気り過ぎた手で得物を握り続けると余計にスレて皮膚を痛めやすい。
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