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 夜道


「なあ、お前ってなんで冒険者してんだ?」


 唐突にジューンが尋ねてくる。その背中にはリコッタ。酔い潰れたリコッタとあたしを宿まで送ってくれてる。

 街灯に照らされた大通りの石畳の縁に躓きかけた。危ない危ない。石畳の継ぎ目って段になってるとこあるのよね。


「お前、回復魔法使えるだろ。神殿に居ればずっと食ってけるだろ」


 回復魔法の使い手が冒険者になるっていうのが理解できないらしく、この質問は今まで数え切れないくらいされてきた。

 そもそも回復魔法を使えるようになるのはそんなに難しい事じゃない。しっかり修行すれば、かすり傷を治せるくらいは出来るようになる。まあ、半年くらいはかかるけど。だけど癒し手が少ないのは、その技術をコツコツコツコツとものになるまで修練する人が少ないからだ。他人を癒すという事に心血を注げる人が少ないから。あと、回復魔法はマナ、魔法の素となる力、を他人を癒す、他人のために変換するという発動プロセス自体に抵抗が発生しやすく、円滑に変換できにくい。要は、他人よりも自分が大事って人が多いから発動しにくいってわけだ。

 回復術士に必要なのは、自分を犠牲にしてでも他人を助けたいと思う心。決して素質ではなく、その人の在り方次第。だから、下世話だけど神官はモテるし、悪い人はあんまり居ない。逆にわがままな悪人には、あたしたちも違うプロセスでしか回復魔法は使えない。回復魔法を使えるって事だけでどこでもすぐに信用されるのはそういうわけ。


「毎日毎日同じことばっかりで、周りに要るのは、子供と老人ばっかり。お金も無くて、ずっと同じ服で、食事は栄養のバランスは取れてるけど、少なくて味が薄いわ。甘いものって言ったら、たまに、信者さんや患者さんに貰えるものだけだけど、周りは子供ばっかり、あたしに回ってくる事は稀よね。当然冷暖房なんか無いから、暑い時寒い時は地下に潜るしかないわ。薄暗くてジメジメした地下に。どうしても暑くて眠れない時なんて、カタコンベでドクロを枕に寝たもんだわ」


 なんか神殿に居た時の事を思い出すと、フツフツとなにかが湧き上がってくる。


「わかった、わかった。お前も大変だったって事だな。まあ、俺様的には、生きてけるならいいとこなんだろって思ってたが、人それぞれって事だな。生きてけると生きてるって違うもんな」


 どうやら、なにかは伝わったみたい。生きてるだけで天国って言葉もあるけど、あたし的には、あの時は緩やかに死んでるようなものだった。そういうのが好きって人もいるけど、あたしは無理だった。もっと歳を取ったら変わるのかもそれないけど。


 


 読んでいただきありがとうございます。


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