わがままディナー 4
「親父、面白いもの出してるな。それ三本頼む」
「あいよ」
ん、ジューンがまた何か頼んだみたいだ。あたしはそこまて飲んでないけど、リコッタは目が座っている。そりゃそうよね、昨日も結構飲んだみたいだし、明らかに飲みすぎよ。三本串頼んだって事はあたしたちも強制的に食べさせられるの? 面白いものってジューンが言ってたからホルモンなんじゃないだろうか?
「あいよ」
ギン爺があたしたちに串を振り分ける。
「なんなのよコレ?」
見た目は普通に肉だけど、なんか所々穴が空いてるように見える。穴が空いたチーズみたいでもある。
「とりあえず食ってみろよ」
あたしとリコッタはその謎串を口に運ぶ。タレがいい感じに焦げてて美味しそうだ。うっ、なにこれ、グニュグニュしてて、言うならグミキャンディーの食感。そう言えば最近グミキャンディーは人気でガムよりも売れてるそうよね。これってグミキャンディー肉? 肉には細かく切れ込みが入っている。味がのりやすくしてるのだろう。
「面白いだろ。それはフワだ」
フワ? そういえばそう言う名前の有名人いたわよね? 嘘! そう言えばあんまり最近聞かないし。その肉!? そんな訳ないわよね。
焼き物はとりあえず一息ついて、ギン爺がこっちを向く。
「おいおい、兄ちゃん、姉ちゃんたちが目ー白黒させてるじゃねーか。フワって言うのはだな。肺だ。空気吸う肺だ。うちでは豚の肺を使ってる」
フワって肺? じゃ、フワさんは肺さんって意味なの? なわけないか。語源ちがうわよね。
「親父、これ新鮮だな」
「おうよ、朝引きを下茹でして、一日しか使わないから面倒なんだよ。時間経つと血生臭くなるからなレバーと一緒だ。残ったのはカレーにぶち込んでる」
「懐かしいな。金が無い時に肉屋に打って出るもらってよく食ってたなー」
「あんた、田舎の出身だろ。ここらじゃフワは下手したら犬のエサだ人気ねーからな。ちゃんとしたら不味くはねーんだが、人ってもんはよ、知らないものにはあんまり手ーださねーんだ。いいものでも、しっかり確認しないとその良さはわかんねーんだよ。当たり前だがな」
リコッタはハフハフ食べてる。あたしも気にならずに食べてる。あたし的には好き寄りの好きだ。
「捨ててるようなもんだな。そりゃ勿体ねーな。フワってデカいから腹には溜まるのになー。親父、あと三本だ。おいおい、耳長、そんな目で見るなよ。俺様が三本食べるんだよ」
さすがにリコッタは満腹なんだろう。
ギン爺が手を動かしながら背中越しに語る。
「どうでもいいんだがよー。なんか最近の若いもんは女の子を『フワフワ』とか『ゆるフワ』とか言うじゃなーか。あれ聞くと『フワ』をおもいついていけねー」
フワフワな女の子、肺肺な女の子。訳わかんない。ゆるフワ、肺が緩いの? ため息でもついてるのかしら。
ジューンは美味そうにフワをガツガツ食べている。あたしはそのうちの一本を略奪した。うん、グミキャンディーだ。
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