俺様黒衣の槍使い
「兄さん強そうだな、俺に一手指南してくれねーか?」
ダンがジューンと名乗った男の前に出る。ジューンは背嚢をドサリと床に置くと、猛獣のような笑みを浮かべる。
「ほう、少しは骨がある奴がいるみたいだな。練兵場に案内しろ」
練兵場? 模擬戦場の事よね。軍出身者みたい。
「こっちだ」
ダンについていくジューン。野次馬がそれに続き、あたしたちもついていく。バルがジューンの荷物を持ってきてるのは思いやりだ。強かろうが弱かろうがここは冒険者ギルド。置き引きされてもされた方が悪い世界だ。
ジューンは木の槍、ダンは木の盾と長剣を手にする。ダンが模擬戦場の床の調子をブーツで蹴って確かめる。少しでも怪我を減らすためにここの床は土。湿度で粘度が変わるから、足場を確かめるのは戦う前の大事な作業だ。
「じゃ、やるか。かかってこい」
ジューンは肩に槍を担ぎ、構えてもいない。ダンを舐めすぎよ。あたしたちの前で対峙してる二人。見学に取れた場所はダンの後ろ、ジューンの正面。
「ああ、行くぜ」
ダンは砂煙を巻き上げながら右に回り込むように動きながら初太刀を放つ。それを受けずに対捌きでかわしながら、突くジューン。動きがただの傭兵崩れとかじゃない。重そうな鎧を着ているのに動きがしっかりしてる。その突きを盾で流しバルの剣が走る。それをまたかわして突く。ダンは盾でいなすが、さらなる突きを間合いを取ってしのぐ。
「兄さん、やんじゃねーか」
「あんたもな。百人長くらいにはすぐなれるぞ」
ジューンは槍を地面に刺すと、ダンに右手を差し出す。ダンはその手に一瞬気を取られるが、木剣を地面に刺し、ジューンの手を握る。ジューンの片方の唇が上がる。やってるやってる、男ってなんでこんな負けず嫌いなんだろ。二人はしばし体を硬直させたが、ダンが先に手を離した。
「俺様の名前はジューン。自由騎士をやってる」
あたしたちのテーブルに当然のようについてるジューン。あたしたちも自己紹介する。自由騎士ってなんなのよ? 自己紹介が終わったとこで、ダンがジューンに話しかける。
「そういや、自由騎士ってアレだろ。国に属してない騎士。で、なんでここに来たんだ?」
「簡単な事だ。武威を示して、名を高めるためだ。元々俺様はとある小さい国の騎士をしてたんだが、国だけじゃなく、世界に名を轟かせるために辞して野に下ったわけだ。あんたやるなー。俺様の連撃を凌がれたのは久々だ」
「そんな大した事ねーよ。避けただけで兄さんに一撃入れた訳じゃねーからな」
それからダンとジューンは急激に仲良くなり、あたしたちはちょっと引き気味にそれを見てた。
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