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 バックアップ


「じゃ、この書類にサインしてねー」


 顔を赤くしたリリーさんがバックから書類を出す。1枚目は追放した冒険者の命をあたしたちが保障するという内容。2枚目は追放がギルドとあたしたちの冒険者パーティー『七色の風』の合同企画で冒険者の潜在能力を測るために行ってるという内容。あと3枚目はこれにより起こった揉め事をギルドは仲裁はするけど、責任は取らないという事。まあ、追放はあたしたちがやってる事だから、ギルドが責任までとってくれないのは当たり前だけど、事前にギルドに文書としてしたためてあれば少しはもめないかもしれないわね。

 リリーさん言うには、この企画を持ち込んだのはダンで、ここのギルド的にも最近強力な冒険者が誕生してない事を憂慮してて、ものは試しととんとん拍子に企画が通ってしまったそうだ。しかも『追放料』として、幾ばくかの金銭も貰えて、ギルドの依頼として、冒険者パーティーが課させるノルマの消化にも充てられるそうだ。自由すぎるでしょ、ここのギルド。それに『追放料』ってなによ。もっと言い方あるでしよ。

 あたしたちが書類にサインすると、リリーさんはぶつぶつ言いながら帰っていった。

 けど、これで追放は悪質な魔物のなすりつけから、ギルドが関与したちょっと行き過ぎた能力検査に変わったわけで……


 バルが酔いもまわったのか、嬉しそうに頭をペチペチして話し始める。


「ガハハハハッ。ダンさすがだな。これでバンバン追放しまくれるな。まあ、ギルドが絡んでてもグレーって言やグレーだがな」


 グレー、んー、なんとも言えないわね。ギルド公認と言っても追放される側は傷つくわけで。ダンもバルも冒険者生活が長くて力が正義的な考えで、そういう配慮が薄いのよね。きっかけを作ったあたしは大層な事言えないけど。あたしはモヤモヤしながら、もう一人の女性であるリコッタを見る。


「レイチェル、テンション低い。大丈夫、一人頭の追放料は安いけど、それなら同時に大勢追放すればいい」


 お金の事じゃないって。


 ペチン。


 バル、また頭叩いてる。


「それはいいアイデアだが、同時にたくさん追放したら、俺らが追放された事になるんじゃないか?」


 うん、十人同時に追放とかしたら、『あ、何いってんの? お前らを追放するよ』って逆になりかねないわね。ここでダンが口を開く。


「おいおい、目的を忘れてんじゃねーよ。追放して覚醒させるのが第一だ。そんなぞろぞろ追放したら、覚醒もなんもあったもんじゃねーだろ。追放は一人だ!」


 んー、お酒のせいか、あたしたちはとても不毛な会話してるような……


「くっ。しけたギルドだな。強そうな奴が居やがらねー」


 ギルドに入ってきて、独り言なのか挑発なのか大声で悪態をついている男。初めてみる。黒いまるでいがぐりみたいに尖った髪。切れ長の狼みたいな目。黒一色の鎧に使い込まれた槍。端正な顔にがっしりとした体格。


「何見てんだよ。俺様の名前はジューン。文句がある奴はいつでも相手してやる!」


 あ、俺様キャラだ。実際自分を俺様って呼ぶ人初めてみた。二次元にしか存在しないかと思ってた。


 ダンが立ちあがる。ちょっと、なにロックオンしてるのよ。次は彼を追放するつもりなの?


 読んでいただきありがとうございます。


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