王子は覚醒できるのか?
「ふっ、とっとと片付けるか」
アストリアは剣を鞘から抜くと鞘をぶん捨てる。なんかあたしたちと一緒の時には優しげな人だったのに、結構ワイルドだ。演技してたのね。まあ、けど、みんな少しは演技してるものだし。
そして、視線が上からになって、ゴーレムとアストリアを映し出す。ギシギシ音を立てながら、ゴーレムはアストリアに近づき、アストリアは剣を両手で上段に構える。
「いかんな、カウンター狙いか」
ダンが唸る。
「なんでよ」
リコッタが尋ねる。
「カウンターは一撃で倒せる時には有効だが、しぶといゴーレム相手にはチクチクとダメージを積むべきだろ。一撃で倒せないと、そのあと隙が出来る」
ダダッ。
ゴーレムが駆け寄り、振るう剣をアストリアはかわすと、ゴーレムの腹を薙ぐ。けど、ダンが言った通り、ゴーレムは無傷しかも微動だにせず。アストリアの動きが止まる。その盾を振るい、アストリアが吹っ飛ばされる。その時に剣が手から離れる。
「効いてないみたいだの」
バルの言葉の後、華麗にアストリアは立ち上がる。そして、落とした剣を拾い構える。
「やっぱ、強いけど、慣れて無いな」
ダンが言う通りだ。冒険者は武器を死ぬまで離さない。あたしたちが駆け出しの頃、先輩たちから、口が酢っぱくなるほど言われてきた言葉だ。
それからアストリアは慣れてきたのか、攻撃をかわす、一撃入れる。そして距離を取るのを繰り返す。けど、アストリアの攻撃は全くゴーレムに効いて無いように見える。まるで剣術の組み手みたいな戦い。華麗にアストリアはゴーレムに一撃を与えていく。見てる側からは、アストリアが圧倒してるように見える。
「駄目だな。助ける準備しとけよ」
ダンが武器を手にする。
「なんでよ?」
リコッタが疑問を口にする。
「嬢ちゃん、よく見ろよ」
バルがゴーレムを指差す。
「攻撃は当たっとるが、全く効いとらん。ゴーレムの指とか間接とか、少しでも弱い所を削って行ってたなら、話は変わるが、ゴーレム、まだ、無傷のようなもんだぞ。ゴーレムはずっと動けるが、人間は……」
なんか見るからにアストリアの動きが投げやりなような感じになる。
「まずいな」
ダンが呟く。
「動きが流れてる」
あたしにも、それは分かる。動いた後に体勢を戻すのが遅れ始めてるんだ。稽古とかと違って、実戦はとても消耗する。ダンやバルは暇さえあれば走り込んで体力をつけている。それでも戦いが長引けばバテる。アストリアはダンよりも剣術の腕は上かもしれないが、スタミナは比べるべくも無いと思う。
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