追放された王子様
あたしたちは、ボス部屋の前で休憩して、突入する事にする。
だけど、あたしたちは入り口で引き返して、アストリアさんだけで戦って貰う予定だ。
ボス部屋の天井にはあらかじめ、遠視の魔道具を隠してセットしてある。それから20メートルの範囲内で、手のような魔道具が見たものを水晶玉に映す事が出来る。これは、東方諸国連合の魔道都市で作られたもので、そこそこの値が張った。いつもはリコッタが魔法の袋に入れて持っている。ボス部屋は扉を開いて中に入ったらゴーレムを倒すまで、入り口に結界が張られて出る事ができなくなる。けど、部屋の外から入る事は出来る。その境界線は丁度部屋の入り口だ。石材の材質が変わるから見ただけで分かる。出られなくなるのは完全に体が部屋に入った時だ。
そして、ダンとバルとアストリアさんは並んで部屋に入ろうとして、アストリアさんをダンが押して、2人は下がる。
「アストリア、お前をパーティーから追放する!」
「おい、ダン、私が何かしたのか? 追放? 冗談だろう?」
キツネにつままれたようなアストリアさんをバルとリコッタが煽る。
「レイチェル、君はどう思ってるんだ?」
「ごめんなさい……」
あたしはリコッタに手を引かれてアストリアさんに背を向ける。あたしたちは元来た道をたどり、曲がってアストリアさんから見えなくなったとこで、遠視の魔道具の水晶玉を出す。それを中央に車座になって、見つめる。
「フッ。またか、才能が有ると言うのは困ったものだ」
アストリアさんは、片手で髪をかき上げる。この魔道具はオプションも付けてて声も拾う。
「おい、アイツ、何やってんだよ」
バルが額を押さえる。言いたい事は分かる。部屋に入ってから、ゴーレムが稼働するのに少しタイムラグがある。あたしたちは、扉の外でバフの魔法をかけて自己強化したあと、デバフの魔法を発動直前まで用意してダッシュしながら、ゴーレムをデバフして、動かないゴーレムに一撃づつ強打を叩き込んでから、乱戦に入る。これだけで、戦闘時間を半分近く削れる。
要は、自分に酔う暇があるならまずは、ファーストアタックを放つべきって事。
「視線をゴーレムに変えるぞ」
バルの言葉で、ゴーレムが映し出れる。ずんぐりむっくりな鎧を纏った人よような形。その目が赤く光り、石の剣と盾を構える。
「美しく万能というのは罪なものだ。無駄に人の嫉妬を買ってしまう」
アストリアさんの声がする。自分で自分を美しいなんて言ってるよ。減点1だわ。
そして、視線が下がりゴーレムとアストリアさんを映す。
「ゴーレムか。初めて戦うが、鈍重そうな奴だな。コイツを倒したら、アイツら全員お仕置きだな。男共は尻に棒をブッ刺して、女共には俺の肉棒をブッ刺してやる!」
ん、アストリアさん? 被ってたの猫? 詳細は分かんないけど、下品な事だろうっていうのは分かる。女の子が男の子の前で可愛い女の子を演じてるのと同様に、男の子は女の子が居ないとこじゃ汚い言葉や下品な言葉を使うって聞いた事あるけど、まさかアストリアさんもそうだったなんて。んー、減点2。あと、7点。まだ、ギリギリ合格かなー。




