重なり合いそうで重なり合わない
御子神の心は牴牾しい気持ちで満たされていく。
【なるほど…。会話を聞くだけでは詳細は分からない…。会話をしている当事者達が共有する記憶が密接に関係しているって事か…。】
御子神は溜め息を吐いた。
【だとしたら尚更、真実には程遠い…。】
その思考を妨げる様に会話は流れる。
「気絶する儀式で快感を得るって変態以外の何モノでもないでしょ?まぁ。その方法を喜んで語っていた齋藤が頭おかしいんだろうけど。」
【ん?何て言った?気絶する方法??】
「その方法を盗み聞きして、実行するのも頭おかしいよね。」
「だけど。あの後ろ姿は片桐でしょ?鞄にあの人形が付いていたし…。何て言ったっけ?あの人形。」
「ブードゥー人形だったっけ?」
【ブードゥー?】
この時、御子神が連想したのは呪術的宗教だった。
【そうだとしたら片桐響子と云う人は…。】
「だから片桐響子が1番怪しいよね…。」
そこで御子神は首を横に振る。
【全ては憶測だ。やっぱり聞こえてくる言葉だけでは、真実は分からない。そもそも、その気絶したのは事件とかではないのではないか…。ただ面白可笑しく意味付けがしたいだけではないのか…。】