表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/6

今までのあとがき

23歳、フリーター、女性…。

スペックは低め。

顔は中の上くらいだけど、芋っぽいのとコミュ障すぎてちやほやされたことなんて一度もない。


良い人でいよう。

復讐なんていけない。

正直に。

困っている人がいたら手を差し伸べよう。


そうやって生きてきた。


本来なら、間違ってないだろう。


しかし、私はいじめられっ子だった。

イジメはさらにエスカレートし、

困っている人を助けても、利用するだけ利用されて、

のちのち恩を仇で返される。

正直者はバカを見るし、周りにとって都合の良い人だとしても、結局、裏で嫌われて、バカにされる。


本当の意味で嫌われているのかはわからないけど、私が嫌われることでクラスのバランスは保たれていた。


さらに、卒業後は、みんなよそよそしくなる。

私は卒業後はイジメなんて関係ないと思い、仕返しなんて考えずに笑顔で接するけど、やはりみんな近所で会っても気まずそうにするのだ。


その後、19歳でたった1人のお父さんが病気で死に、20歳で恋人と数少ない私の味方であった友人が事故で私の目の前で亡くなり、地元ではどんどん私の居場所がなくなっていった。


私は悪くないはずなのに、どんどんみんなが私を引いた目で見るようになっていった。


23歳、昼間はコンビニで働き、空いた時間は身体を売って生活している。

身体を売る仕事というのはたくさん種類があるが、その中でも一番、その…本格的な仕事だ。

理由は、私はズルさがなく、可愛げもない、ただ素直なだけの人間だから、水商売やパパ活だと稼げないのだ。おねだりもできないし、向こうが何もくれなくてもニコニコしてしまうので、だんだん値切られてしまう。

さらに、男性経験が少なすぎて、自分の技術で男性を満足させることができない。

だから、身体を売るときも完全に受け身で、ニコニコ話すだけで済む、駆け引きのいらない仕事しかできない。

性格も悪くはないし、外見は綺麗なすっぴん顔に、女優並みの細身と、そこそこ良いので、貢がれることこそないものの、お店のルールにのっとって稼いでいる。


コンビニのアルバイトも怒鳴られながらも笑顔で働いている。

学校ではいじめられてもお給料もらえなかったけど、

アルバイトでは怒鳴られながらもお給料もらえるから全然大丈夫。


こんな人間としての底辺でも這いつくばりながら生きている。


しかし、ある時、渋谷を歩いていたら、こんな事があった。

「自分、ポートレートカメラマンしながら、ユーチューバーやってる者なんですけど、黒髪の方探していまして、写真撮らせていただけませんか?」

メガネをかけた若い男性に名刺を渡されて、私は驚く。

身体を売る仕事をしているからあまり目立つことはするべきじゃないのは分かってはいる。

しかし、暇だったのと気が向いたから、承諾してしまった。

撮影は二時間に及んだ。

背伸びしたり、普段しない体勢に身体がプルプルしてしまう。

カメラマンさんが私を撮りながら尋ねてくる。

「ポートレートの経験はありますか?」

「ないです〜! ポートレートもいま初めて知りました!」

私が笑うと、カメラマンさんはびっくりしてフィルターから目を外す。

「え! こんなにがんばってくださるから、てっきり……」

「いえ! 私も楽しいですから!」

「いや、ありがたいです…。写真、インスタグラムにあげてもいいですか?」

「どうぞ!」

ひとりしきり撮影した後、解散して、数日後。


そのカメラマンさんのインスタグラムを覗くといいねが一万ほど集まっていた。

コメント欄でも、可愛い! 誰ですか! と盛り上がっている。

私以外の女の子の写真に対する平均的ないいね数が8000。カメラマンさん自体のインスタのフォロワー数が八万。

私の写真に対しての反応はかなりいい方だろう。

これで私の生活が変わるわけじゃないけど、やはり嬉しい。

丁度その翌日に飲み会があった。

メンバーは仕事仲間とかそういうのじゃないけど飲み会好きが集まって、ワイワイする会。

自分は珍しくいいことがあったのでついついそのインスタの話をしてみた。

「ふーん。でさー」

誰も食いついてくれず、話は終わった。

私はちょっと、へこんでしまった。


インスタのコメントではみんな私のことを褒めてくれてたのに、私の知り合いは褒めてくれないと言う事実が悲しかった。


前々から違和感を感じてた。

みんな私のことちやほやしないし、外見も中の上とか言うけれど、鏡とか見ていてもしかしたら私ってだいぶかわいいんじゃないかと不思議に思っていた。

私の方が可愛い気がするのに、1番かわいいって別の子が言われていたり、ちやほやされていたりする。

卒業アルバム見ているとみんなから容姿を褒められていた子がそうでもなかったり。

人気者としてみんなが扱っている子がとってもわがままだったりすると、なんで私がこんなに周りに尽くしているのに嫌われもので、そんなわがままな子が好かれているんだろうと思っていたこともあった。


「集団心理を信じさせる見せ方」


極論、空気が読めなくても、人を傷つける発言をしていても、「私はコミュ力高いです」って顔をしていたら、誰もその子のコミュニケーション力の低さに気づかない。

めちゃくちゃ可愛くなくても、かわいい人として振る舞っていけば、何でも許してもらえる。

ぶりっこは可愛い子しか許されない、とは言ってもぶりっこしていれば可愛く見えてしまうし、

私のように立ち振る舞いが下手だったら、実際以上にスペック低く評価されてしまう。


23歳にして気づいてしまった。

我ながら遅すぎるし、素直すぎる。

だって、テストで80点とっても、親が馬鹿って言うから、あっそうなんだって思っちゃうんだよ。

家事全部やっていたんだけど、親があんたは全然手伝いしないって言うから、家事全部じゃ足りないんだって思っていた。

でも同級生が「私水筒も洗わないよ」っていうの聞いてから、すごく不思議に思っていた。

私はダメでみんなはいいのか。

私はあんまり可愛い子として扱われないけど

なんであの子は可愛い子として扱われるんだろう。

私は人を傷つけること言わないけれど

なんであの子は人が傷つくようなデリカシーな言動言うのに許されているんだろう。

でも、私は自分の認識に自信が持てなかった。


みんなが違うって言うんだったらそうなんだって思うしかない…。

今までの人生どれだけ損していたんだろう。


私は、確かにスペックは低い。

子供の時から鈍臭かった。

だからたくさん努力した。周りに馬鹿にされないように。周りに迷惑をかけないように。

しかし、能力を改善するだけの努力しかしていなかった。

勉強、運動、その他文化的なもの、コミュニケーション力、それだけじゃいけなかった。

集団心理をコントロールするほどの自分の見せ方、強引さ、そこをもっとうまく改善しておけばよかった。



その飲み会の帰り道、私は交通事故で死んだ。

地元であっという間にその話は広がったが、誰も興味を示さなかった。

示さなかったと言うより、他人から見た私の人生があまりにも不幸すぎて、興味を示したくなかったんだと思う。


いじめられたのも実は私のせいじゃないし、

どんくさくても改善しようと努力をしていたし、

人のために尽くしていて、

親が死んだのも私のせいじゃない、

恋人と言う人を亡くしたのも私のせいじゃない、

女の特権も使わず、ズルさもないから、身体を売っても大した稼ぎにはならず、それもコンビニの仕事をしながら、足りない分を賄うか貯金をする用途でしか使わない。

飲み会でも他の女性の引き立て役にされてもニコニコしている。

そんな雑魚な女性が23歳で死んだ話なんて、誰も聞いていて気持ちよくない。

悪い事した人が罰される、とかそういう話がみんなに求められるものだ。

人の不幸は蜜の味と言うが、私の不幸は周りの人の不幸よりもあまりにレベルが違いすぎるので、地元の人たちはドン引きしている。

おそらくこの先地元の人がどんなに努力したとしても、どんなに不幸な目にあったとしても、私よりマシな状況だろう。

つまること、私は不幸すぎて周りの人の人生を否定しているのだ。

周りの人がどんなに辛かった悲しかった、と愚痴りたかったとしても、私がそれを凌駕するほどの不幸を経験しているので、その気持ちを否定してしまう。


私が素直すぎると、周りが汚れてるみたいになってしまう。

もっと早くこれくらいのこと気づけばよかった。

私は性格は悪くなかったのだ。

ずっと自分の性格が問題があると思っていた。

人の性格の悪さに鈍感で、配慮できなかったところが問題だ。

偉そうって思うかい?

私もそう思うから、今まで素直に生きてたんだけどな。


続く

次から本気出します

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ