七行詩 501.~510.
ストックの都合のため、501番より、毎週月曜日に10ずつの投稿をさせていただきます。
『七行詩』
501.
貴方はそれが 私の宝物になると
分かって笑ってくれたのですか
待つことが 私の人生に ついて回る中
決して色褪せることのない 輝きがあるとしたら
貴方との間にしかないでしょう
貴方は私が 心を開ける最後の人であり
同じ宝箱の鍵を持つ 唯ひとり 最愛の人です
502.
強く燃え上がる炎にも
蓋をすれば消えてしまうのに
貴方は自分で カーテンを閉め
静かに一日を終えようとしている
窓の外には 貴方を見上げ
歌いかける人がいるかもしれない
貴方の炎が 消えないようにと 祈りながら
503.
「手紙は読むより 書く方が時間がかかる」と
誰かが言っても 私はそれを掲げません
郵便屋さんがいうことには 受取人はもう居らず
手元に帰ってくるのですが
書きしたためるその間
幸せが溢れているならば
想う相手が居ることで 救われるのは私ですから
504.
この星は 私たちが再び巡り会うのを
待っていてくれるだろうか
重力は この地に二人を
引き留めていてくれるだろうか
天はいつか 二人が互いを忘れても
巡り会わせてくれるだろうか
見上げていると いつも思うのは そんなことで
505.
貴方の来ない 待ち合わせにも意味があり
空席に貴方が腰を降ろし
立ち上がれば 並んで歩き出す 影が見える
何を捨てても 幸せだった
あの日々のために 生きてきた
今はただ 星間に漂う 塵のように
主役にはなれず 空の幕を飾ることしかできない
506.
夏の海では 日が暮れても
浜辺の城を 何度も建て直していた
日焼けした手を 水に透かせば
どこから生まれ どこに住み着いて
暮らしてきたのか 考える
立ち止まらず 歩いても残るのは 足跡だけ
私達は今 立ち止まり 平坦な土壌に 未来を築く
507.
宝箱は いつか二人で開けましょう
互いに鍵を預けたまま
貴方は最後に 糸を絡ませた
二人が離れ 引くほどに強く 結ばれるよう
緩むのは 糸が切れる時か 再び近づく時であるか
どうか切れぬよう 祈りながら
鍵を手に 私はベンチに腰かけている
508.
騒ぐ声 どこか花火のにおいがする
軒下 鈴の音は揺れて
季節を伝えていたというのに
夏の終わりに気づく頃には
長い夢を見ていたかのようで
夜風に当たり 目を閉じれば
私も少しずつ 老いてゆく
509.
窓際 顔を出す 鳥に尋ねる
あの人は今どこにいますか
足元 じゃれつく 猫に尋ねる
あの人は何をしていますか
青空 浮かぶ 雲に尋ねる
貴方の行き先は どちらですか
空からあの人は 見えますか
510.
いつも貴方の背を追うばかりでも
貴方がこの曲を弾くとき
その間だけは 鍵盤の上で
同じ景色を見ることができるということ
小さな手が 私の後を追ってくると
生まれる旋律に 貴方は何を感じるでしょう
重なる瞬間に 貴方は何を思うでしょう