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第5章ー9

 やられたらやり返せではないが。

 こういった状況が、1942年の晩秋から1943年の春に掛けてソ連国内に起きたことが、スパス・チャンドラ・ボースが、1943年4月頃にインドへ密入国するということを促した、とされている。


(なお、スバス・チャンドラ・ボースが、ソ連国内からインドに戻ったのが、何時なのかは諸説あり、一応、1943年4月が最有力説とされるが、異説も根強い。

 中には、ずっとインド国内に基本的に潜伏していた、という説もあるが、ソ連国内での複数の目撃証言等から、第二次世界大戦中、少なくとも一時はソ連国内にいたのは間違いないとされる)


 そして、1943年4月頃に、何故にスバス・チャンドラ・ボースがインドに密入国したか、というと。

 当時、スバス・チャンドラ・ボースを支援していたソ連政府にしてみれば、ロシア革命の際にレーニンが果たしたような役割を、インドにおいてスバス・チャンドラ・ボースに期待したから、と言われる。

 更に言うなら、スバス・チャンドラ・ボースにしても、最早、ソ連は泥船に見えており、インド国内に自分が戻ることで、ガンジーやネルーら、有力な指導者を相次いで失ったことで混乱しているインドの国民会議派等を糾合してインドの独立を果たそう、と考えたかららしい。


 だが、実際問題としては。

 スバス・チャンドラ・ボースが単純にインドに密入国したからと言って、ロシア革命においてレーニンがロシアに帰国した際のように、国民会議派等が、スバス・チャンドラ・ボースの下に結集するという事態は起こらなかった。

 スバス・チャンドラ・ボース自らもまいた種ではあったが、ヒンズー教徒と非ヒンズー教徒(主にイスラム教徒だが、シーク教徒等もいた)を軸とするインド国内の宗教、民族対立は激化しつつある一方であり、国民会議派内部の対立も激化する一方だったのだ。


 そして、スバス・チャンドラ・ボースは、インドに戻って以降、周囲にインドが一体となった状態での英国からの独立を訴えたが、このことはインドの宗教、民族対立が深化する中では、却って主に現実主義者の間で、スバス・チャンドラ・ボースの支持を減らす結果を招いた。

 このような状況の下、インドの独立を求めはするが、それは、異教徒や異民族をできる限り排除し、それぞれの地域で分離独立するのが、現実的には妥当なのではないか、と主張する者が増えていたからである。


 それに言うまでもなく、英政府も、それこそ英国王の王冠といえるインドの独立をできる限り阻止しようと努めていることから。

 スバス・チャンドラ・ボースは、いわゆる賞金首として英政府に追われる身でもあり、そうそう公然と姿を現しての活動が出来る訳でもなかった。

 そのために、スバス・チャンドラ・ボース自身の希望や、ソ連政府の目論見通りには、スバス・チャンドラ・ボースの支持は、インド内部で広がることはなく、インド内部の混迷は深まる一方だった。


 そして、この中央アジアからインド方面の混迷は、連合国側にもソ連側にも、お互いに更なる混迷を徐々に招くものに他ならなかった。


 この頃、ソ連国内の混乱を煽るために、連合国側は基本的にイスラム教徒側に肩入れしており、また、第二次世界大戦後のことを見据えて、中国の分裂を陰で指嗾していた。

 とは言え、イスラム教徒一つとっても、一枚岩には程遠い。

 例えば、スンニ派とシーア派の対立があるし、他にも穏健派と強硬派の対立もあるし、また、民族間の対立も絡んでくる。

 こういったことから、ソ連国内の混乱は、インドや中国にも波及してくるし、それへの対応に連合国は苦慮することになる。

 連合国の最終攻勢は、混迷の中で行われたのだ。

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