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第5章ー6

「疾風」に搭乗し、日本空軍の戦略爆撃機部隊を現に護衛していた小林照彦中尉は、中野松美軍曹との息の合った連携攻撃により、ラグ戦闘機1機に火を噴かせたばかりだった。

「あれは落ちるかな」

「撃墜確実とみていいと思います」

「よし、共同撃墜1としよう」

「いえ、火を噴かせたのは中尉の銃撃ですから、小林中尉の単独撃墜でいいです」

「何を言う。中野軍曹の援護が無ければ、撃墜できなかった。共同撃墜だ。上官命令に従え」

「ありがとうございます」

 二人は、そんなやり取りをしたが、決して周囲の警戒は怠らないように努めてはいる。

 とは言え、そんな会話ができるのは。


「ソ連空軍の戦闘機の数は、こちらの戦闘機数より、どう見ても少ないな」

「自分にもそう見えます。戦闘機だけでも、幾らソ連空軍の戦闘機を多く見積もっても、我々が2対1以上の比率で、数的優勢を確保しています。それに加えて、重爆撃機の数単体でも、ソ連空軍より圧倒的優位にあるように自分には見えます」

「自分も同感だ。これなら、重爆撃機の護衛という任務を完遂できそうだな」

「はい」

 更に、そんな会話ができるだけの、数的優勢を自分達が確保しているからだ。


 小林中尉の見るところ、モスクワ上空において、日本空軍の重爆撃機の数は300機を数え、更にそれを護衛する戦闘機の数も300機超を数えている。

 それに対して、ソ連空軍が迎撃のために送り出してきたのは、中野軍曹も自分の判断を肯定しているが、どう見ても150機には及ばず、多く見て120機台といったところだろう。

 そして、「疾風」は1対1程度の数的戦闘では、どのソ連空軍の戦闘機よりも優位に戦えるのだ。

 それが数的優位を確保して戦っている以上は。


 勿論、我々に被害が出ない訳ではない。

 しかし、どう見てもソ連空軍の戦闘機部隊の方が被害が大きい。

 そう言ったことから、小林中尉と中野軍曹は会話ができる余裕があったのだが。


「あれは何だ」

 小林中尉の目に、どう見ても高度1万メートル以上の高みにいる航空機の姿が入った。

 その姿は、どう見ても単発機だ。

 そして、そこまでの高みに日本空軍を始めとする連合国軍の戦闘機が上がる必要性が乏しいことからすれば、あの航空機の正体は。

「いかん。上がるぞ」

 小林中尉は、ほぼ確実にソ連空軍の戦闘機、と即座に判断し、中野軍曹と共に急上昇に掛かった。


 1機だけ、と当初は小林中尉には見えていたが、他にも複数、おそらく6機はいる、と分かってきた。

 自分達以外も気が付いたようで、慌てて上昇に掛かった戦闘機が他に4機はいるようだ。

 だが、彼らが急降下に入った方が早かった。

 しかも、彼らは発砲しない。

 口には出さず、至近距離まで発砲しないのか、と小林中尉が考えている内にも、彼らは思い思いに99式重爆撃機にバラバラに迫っていき、1機が99式重爆撃機の防御銃火の前に火を噴いたが、残りの5機は。


「そこまでやるか」

 小林中尉は、そう呟かざるを得なかった。

 いや、この光景を見た全ての日本空軍の搭乗員が、そう(実際には口に出さずとも内心で)呟いただろう。


 結果的に、小林中尉らの迎撃は間に合わず、5機の敵機は、99式重爆撃機5機と刺し違えるように散華して果てることになった。

 しかも、それから4人の搭乗員が脱出を果たしたようだが、その落下傘が中々開かないように、小林中尉には見えた。


「どういうつもりだ」

 小林中尉がそう考える内に4人の姿は、小林中尉の視界から消えた。

(なお、小林中尉は知る由も無かったが、4人の内3人は低高度での開傘に成功し生還した)


 小林中尉は、基地への帰還後、あの時の光景が思い出されてならなかった。

 ここまでの事態が起きるようになったとは。

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