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第5章ー5

 とは言え、ソ連空軍もこういった連合国軍の戦略爆撃に対して、無策という訳ではない。

 できる限り、連合国軍の戦闘機部隊には、ラグやヤク戦闘機で対処し、重爆撃機部隊には、それなりの高高度性能を持つミグ戦闘機(具体的にはMig-3戦闘機)が対処するという方法で、連合国軍の戦略爆撃に対処している。


 とは言え、ミグ戦闘機は余りにも弱火力(当初は12.7ミリ機関銃1丁に7.7ミリ機関銃1丁を搭載という有様)と言わざるを得なかったので、99式重爆撃機等、連合国軍の戦略爆撃機と対戦するようになるとそれなり以上の改造を施された上で、戦うようになっていた。


「あの太い曳光弾、どう見ても12.7ミリ級以上、おそらく20ミリ級だな」

 野中五郎大尉らが搭乗する99式重爆撃機の機体を掠めた曳光弾の流れを見て、後上部銃座の機銃手がそう呟いているのが、野中大尉の耳にまで届いた。

 実際、野中大尉の目からしても、後上部銃座の機銃手の目は正しいように見える。

 そこまでの火力強化をミグ戦闘機にしていないと、99式重爆撃機を撃墜するのに苦労する、とソ連空軍は判断しているのだ。


 更に言うなら。

「あんな無誘導のロケット弾を乱射しても、かなり無意味だろうに」

 それこそ腸内ガスの膨張で腹痛に襲われているのだろう、冷や汗を流して顔を歪めている副操縦士が、少しでも気を紛らわせようとしているのか、吐き捨てるように言うのも、野中大尉の耳に入ってくる。

 別のミグ戦闘機が、搭載しているロケット弾を乱射して、それを1発でも命中させることで、99式重爆撃機を落とそうとしたようだ。

 とは言え、幾ら乱射したとしても、所詮は無誘導弾6発に過ぎない。

 結果的には1機にしか命中しないという結果に終わった。


 そういったソ連空軍の阻止行動に対して、連合国軍の戦闘機部隊、今回の場合は「疾風」戦闘機部隊、は敢然と反撃して、多くを返り討ちにしている。

 更に、99式重爆撃機が、現在、構成しているコンバットボックスを始めとする、これまでの空対空戦闘の経験から導入されたハード、ソフトの様々な改善が、ソ連空軍の戦闘機部隊の攻撃の有効性を低下させているという現実がある。

(例えば、重爆撃機の機銃手等が着用している防弾ジャケットは、第二次世界大戦勃発以来、様々な改善が行われており、開戦当初は着ても着なくても同じ、と言われていたのが、第二次世界大戦末期には防弾ジャケット着用により、多くの重爆撃機乗りの命が救われたと評価されるまでに改善がされている)


 そのために、一部のソ連空軍の戦闘機部隊は、連合国軍の重爆撃機部隊に対して、体当たり攻撃も辞さないという敢闘精神を示すようにもなっている。

 裏返せば、そこまで、連合国軍の重爆撃機部隊は落としにくい、とソ連空軍上層部は判断するようになっていて、体当たり攻撃を是認するようになっていたのだ。

 だが、これにも様々な問題があった。


 幾ら目標が重爆撃機という戦闘機に比較すれば巨大な目標とはいえ、三次元の戦闘で、相手も移動しているという中で体当たり攻撃を試みるのだ。

 それこそ操縦士資格を取ったばかりのようなひよっこ搭乗員では、そんな攻撃を試みても、目標に容易にかわされてしまい、逆に防御銃火の前にハチの巣になる。

 いや、それ以前に護衛戦闘機の妨害を潜り抜けられない公算が高かった。


 そうなると腕利きの搭乗員が行わざるを得ないが、それこそ現在のソ連においては、開戦以来の損耗により、そのような搭乗員は、今や宝石に等しい存在である。

 となると、体当たり攻撃を行う搭乗員には、攻撃後、できる限り、生還してもらう必要があった。

「十死零生」では、体当たり攻撃は失敗なのだ。

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