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第5章ー3

 そして、欧州に派遣されてから、野中五郎大尉は99式重爆撃機に搭乗し、日本空軍の戦略爆撃を行う部隊の一員として、モスクワを始めとするソ連の各地に対するソ連国内の様々な戦略目標に対して、前線に配備された際には、隔日に近い頻度で爆撃を繰り返していた。

 更に言うなら、こういった部隊は、ある程度の損耗があったら、一旦、後方に下げられて、補充兵や機材が届けられて、部隊の再編成が行われ、再訓練を行った後、再度、前線に赴くことが繰り返されてもいた。


 なお、本来から言えば、ある程度の戦場経験を積めば、補充兵の訓練等の必要もあり、教官任務を志願等して、重爆撃機乗りの多くは、基本的に前線を離れることが可能なのだが。

 野中大尉は、自身の性格(や周囲には口をつぐんでいるが、実兄の1人が過激思想に染まり、現役軍人には許されない政治活動に奔った末に、責任を取って自決したこと)から、前線任務をずっと志願し続けており、空軍上層部も野中大尉の意思を表面上は尊重して、野中大尉が前線任務へ配置することを続けていた。

(表面上は、と書いたのは、空軍上層部の本音としては、野中大尉が内心では、兄の考えを支持しており、過激思想の持ち主ではないか、と警戒していたからである)


 そして、今日も野中大尉の姿は、出撃部隊の中にあった。


 そして、出撃する重爆撃機は、基本的に航続距離が長く、更にソ連空軍の迎撃部隊も頻繁に襲撃してくる等の事情もあり、爆撃を行う際の護衛戦闘機部隊も、ずっと随伴するという訳には行かないという事情から。

「今日は、最初はあの部隊か」

 野中大尉は、自分の周囲を飛ぶ戦闘機部隊に、眼を細めた。

 今日は、99式戦闘機を装備する部隊が、最初の護衛を務めるようだ。


 第二次世界大戦勃発時に、世界最強を(主に日本国内で)謳われた99式戦闘機は、最初は栄エンジンを積んでいたが、現在は主に金星エンジンを搭載した後期型が主力を構成している。

 とは言え、今や第一線で戦うのには、99式戦闘機は、後期型といえども、少々旧式化しているのも事実としか言いようが無かった。


 それでも、第二次世界大戦勃発以前、具体的には中国内戦介入以来の古参戦闘機乗り、特に下士官クラスからの99式戦闘機の人気は根強いものがあり。

「2式戦闘爆撃機「雷電」に乗るくらいなら、99式戦闘機の初期型に乗った方がいい」

 と公言する者が多くいた。


(もっとも、これはいわゆる好みの問題と言うもので、カタログデータからすれば、「雷電」の方が、99式戦闘機の後期型よりも、性能は上だった。

 ただ、格闘戦に持ち込めればだが、99式戦闘機は未だにかなりの優位を、味方の連合国軍の戦闘機の間でさえ誇っており、そのために格闘戦を好む古参戦闘機乗りの受けは良かったのだ)


「流石にモスクワ上空となると、99式戦闘機では不安があるからな」

 そう呟きながら、野中大尉は、99式重爆撃機に搭乗して、モスクワを目指した。

 今日の自分達の任務は、モスクワへの鉄道網を主に叩くことだ。

 モスクワは、ソ連にしてみれば、交通の結節点であり、ここの鉄道網が動かなくなれば、ソ連にしてみれば部隊の移動や、物資の移動等々に様々な問題が生じることになる。


 そのために、ソ連もモスクワの防空には格段の配慮を払っており、連合国の航空部隊は、基本的に高高度からの爆撃を基本としていた。

 そうしないと、それこそ対ソ欧州戦本格化前から、延々と整備されていたのではないか、と思われる程の激しい対空砲火をかわせないからだ。

 一時、夜間低空爆撃を、米陸軍航空隊の一部を敢行したが。

 激烈な対空砲火(それこそ味方ごと撃ち落とす程の)の前に、すぐに中止となったのだ。

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