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第5章ー2

 ロシアの冬の極寒を乗り切ろうとすると、高糖質、高脂肪の高カロリー食が必要不可欠なのです。

 この世界で対ソ欧州戦のために派遣された日本軍の将兵は、かなりの高カロリー食を摂ることで、冬を乗り切りました。

 それにしても、上原敏子上等兵の1日の摂取カロリー量は、ちょっと摂りすぎかも。

(21世紀の現代日本なら、17歳の女子高生が毎日、摂るカロリー量ではないです)

 もっとも、ここまでの事態が引き起こされたのは、ソ連、ロシアの冬の寒さ対策のために、日本軍(日本軍以外も同様だったが)の将兵の間で、高カロリーの食事を何としても食べねばならない、という事態が引き起こされたからだった。

 何しろ、17歳の女性の上原敏子看護上等兵の場合、暖かくなるまでは1日に最低3000キロカロリー以上の食事をとらなければ、徐々に痩せていくような事態だったのだ。

(これは、従軍看護婦の仕事が激務なのもあるが)

 一般の日本軍の将兵の場合、1日に4000キロカロリー以上の食事が奨励される有様だった。


 3000キロカロリーと一口に言うが。

 これを(概算になるが)ご飯だけで摂ろうとすると1日に6合を、食パンだけで摂ろうとするなら1日に3斤を食べないと、基本的に賄えない計算になるのだ。


「こんな食事の量、沖縄にいる幼馴染の同級生に、私が食べているのを見られたら、呆れ返られて、こんな大食いとは知らなかった、と言われて、半分、絶交されてもおかしくない気がする」

 そう零しながら、上原看護上等兵は懸命に三食の食事のみならず、間食を時間の合間に詰め込むことで、自らの(体型維持ではなかった)職務を何とか果たして、冬を生き延びることができた。


 他の女性達も大同小異で、それもあって、日本軍の女性陣は食事に口を挟み、高カロリー食を少しでも美味しく摂ろうと試行錯誤を繰り返して、新メニューや、料理の改良に努めたといえる。

 そうした中、多くの日本軍の将兵に受け入れられたのが、カレーにマヨネーズという組み合わせだった。


 そして、立場や内容は違うものの、食事に苦しむのは他の日本軍部隊にもいた。

「豆等を入れるな、と言っておいたのに」

 野中五郎大尉は、入念に出撃前の最後の食事の際に、豆とかキャベツを取り分けていた。


 日本空軍の誇る99式重爆撃機(米国のボーイング社のB-17重爆撃機を、日本の鈴木重工がライセンス生産した重爆撃機)は、対ソ戦における主力戦略爆撃機だったが。

 この搭乗員達は、常に食事に気を使わざるを得なかった。

 特に出撃前の最後の食事においては、深刻極まりない話を引き起こしていた。

 下手に食べたら、地獄の苦しみを引き起こす食材、豆やキャベツ等があったのだ。


 勿論、栄養バランス等を考えれば、豆やキャベツ等の野菜を食べねばならないのを、野中大尉も重々承知はしているのだが。

「高空でおなら、ガスが腸内で溜まっては、地獄の苦しみになるからな。全く出したくても出せない、あの苦しさ。正操縦士が苦しさの余り、失神して、副操縦士が急きょ操縦したことで、何とか帰還できた仲間が何機あることか。逆に副操縦士が失神して、正操縦士が冷や汗をかきながら帰還した仲間もいたな」

 ブツブツと小声で呟きながら、(当時)腸内でガスを発生させると言われている豆やキャベツ等を、野中大尉は選り分けて、食べないようにしていた。


 ちなみに、他の多くの搭乗員も同じことをしている。

 他の多くの搭乗員も、野中大尉と同様の考えだからだ。

 航空機に搭乗して、高空にいる際に、腸内にガスが溜まって、おならをしたくなったら。

 その恐怖心から、日本空軍の搭乗員の多くが、基本的に豆やキャベツ等を忌避して、特に出撃前の最後の食事では、絶対に食べないようにしていたのだ。


 なお、このような行動をしていたのは、日本空軍の搭乗員だけでは無かった。

 他の空軍の搭乗員や海軍航空隊の搭乗員、特に英米空軍の戦略爆撃機部隊の搭乗員も同様に、豆やキャベツ等を食べないように努めていた。

 その理由は、日本空軍の搭乗員と全く同様の理由で、腸内ガスの苦しみを空では味わいたくない、ということからだったのだ。 

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