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第4章ー20

 そんな悔しい想いを、リディア・リトヴァク中尉はする羽目になったが、その想いは、スターリングラードに補給物資や補充兵を届けるために奮闘しているソ連軍関係者の多くが共有している想いでもあった。


 だが、現実は非情極まりないもので。

 例えば、ヴォルガ河の河岸を中心に、対空砲火を浴びせることで、連合極軍の空襲の猛威を減殺し、補給物資等を送り届けようとして展開されるソ連軍の対空砲部隊は、

「1発、高射砲弾を撃ったら、お返しに全部で最低でも1トンの爆弾が降ってくる」

 と噂される連合国軍の航空部隊の攻撃によって、

「あの対空砲部隊に配属されたら、1週間も経たずに、政治士官と言えど、この世では生きていない」

 と言うのが現実で、熱烈な共産党員でさえも陰では、

「あの対空砲部隊への配属は、死刑判決と同義だ」

 と言いかわす有様だった。


 そして、後方から補給物資や補充兵がまともには届かないことは、徐々にスターリングラード攻防戦において、ソ連軍の不利に働きだした。


「こういう時、ソ連軍の短機関銃は有難いな」

 色々な手管を駆使してかき集められたPPsh41短機関銃を、スペイン青軍団の歩兵部隊は、多数装備しており、スターリングラードでの市街戦で駆使していた。

 スターリングラードでの市街戦において、同じPPsh41短機関銃の銃声が、敵味方の間でお互いに響き合うというのは、敵味方が混在する現在の戦況においては、本来からすれば同士撃ちのリスクが極めて高い話ではあるが。


「戦場経験の差が出るな」

 スペインの将兵は、経験も合わさって、軍服が違う等の事情が分かれば、同じ銃の銃声が響き合う中でも即座に撃つが、相対的に戦場経験の少ないソ連軍の将兵は、どうしても射撃をためらってしまう。

 勿論、スペインの将兵同士の誤射事件が全く起こっていない訳ではないが、この戦場においては、ソ連軍の方が不利な状況で戦っていた。

 また。


「どうも、ソ連軍は弾不足を警戒して、射撃を躊躇ってもいるようだ」

 そうスペインの将兵は、判断するようになっていた。

 スペインの将兵にしてみれば、PPsh41短機関銃は、いわゆる員数外の装備であり、使い潰して構わない兵器である。

 もし、手持ちの弾が無くなったら、市街戦には向いていないが、元の小銃を使えばいいのだ。

 だから、手持ちの銃弾をバラマキ尽くしたら、元の小銃を使うまでだ、と腹をくくって、弾を乱射している者が多い。

 そして、市街戦における戦いで、短機関銃を有効に活用するには、ある程度の弾の乱射が不可欠だった。

 

 それに対して、ソ連軍の多くの将兵にしてみれば、手持ちのPPsh41短機関銃が無ければ、そして、弾が無くなったら、自分達は銃を失い、スコップ等で戦うしかなくなってしまう。

 幾ら近接白兵戦で、スコップ等が役立つ兵器だと言われても、短機関銃を装備した兵士に、スコップ等で挑んで自分は勝てる、と思えるソ連軍の兵士は、優秀で天才の兵士か、それと紙一重の兵士だった。

(天才と〇〇は紙一重である)

 更に言えば、補給物資がろくに届かないということは、弾が届かないということでもあるのだ。


 そうしたこと等から、スターリングラードでの市街戦において、ソ連軍は徐々に押されるようになった。

 こうした中でも、補充兵が大量に届いていれば、

「攻撃は最大の防御だ」

 ということで、肉弾攻撃を積極的にソ連軍は仕掛けていたかもしれない。

 しかし、補充兵もろくに届かないとあっては、攻勢防御的な戦いを行うにも限度があった。


 更にこれまでの戦訓から、フランス軍もスペイン青軍団も、馬乗り攻撃を地下道にいるソ連軍に多用し、それによって、ソ連軍の地下からの反撃は徐々に困難になった。

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