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第1章ー8

 こういった1943年1月初頭におけるサンクトペテルブルクでの動きは、世界に大きな波紋を広げた。


 スターリン率いるソ連政府は、ロシア諸民族解放委員会の設立と、その背後にある連合国の多くの政府、軍の動きから、この第二次世界大戦において、無条件降伏以外の講和を連合国は受け入れるつもりが無いのだ、ということを察した。

 そして、共産中国政府も、これまでの日米等との経緯から、第二次世界大戦が、連合国との一時的な停戦条約締結から、なし崩し的な事実上の講和状態になることを、内心では希望していたのだが、ロシア諸民族解放委員会設立等の動きから、我々に対しても無条件降伏以外の講和を、連合国は受け入れるつもりがない、と判断するようになった。


 そうしたことから、ソ連政府は、春になってから連合国軍が発動すると推定される春季攻勢の前に、ソ連軍側から冬季攻勢を発動することで、少しでも土地を取り返し、また、連合国の勝利を、ピュロスの勝利とすべく作戦を立案することとなった。

 また、共産中国政府も、既に国力的にはかなり損耗していたが、ゲリラ戦を少しでも活発に行うことで、ソ連政府と同様に、日米軍に対して損害を与えようと策すことになった。


 一方、連合国側も、米英仏日伊等の主要国を始めとして、最終攻勢の発動を準備するようになった。

 とは言え、今は厳寒の冬である。

 春、暖かくなってからの連合国側の最終攻勢発動はやむを得ない話だった。

 何しろ。


「色々と北満州等でノウハウを知って積み重ねてきた筈だが、どうしても海兵隊は、陸軍よりも防寒対策で少し劣ると自認せざるを得ないな」

「その少しが積み重なると大きいからな。空冷ディーゼルエンジンに陸軍がこだわった理由が分かったか」

「大いによくわかったよ。水冷ガソリンエンジンが、中々まともに動かないからな。ほんの少しの差が積み重なると、どんどん大きくなっていく」

 この頃、海兵隊所属の川本泰三中尉と、陸軍所属の右近徳太郎中尉は、会うたびにそんな会話を交わす羽目になっていた。


 日本陸軍は、できる限り、戦車、自動車等については、ディーゼルエンジン化を進めていた。

 一方、日本海兵隊は、英米仏との共闘の際の燃料調達の手間から、ガソリンエンジンを採用している。

 更に付け加えれば、陸軍は空冷を好んだが、海兵隊は水冷を好んでいた。


 このあたりは、お互いに一長一短があるので、極端に言えば、好みの問題になるのだが、この1942年から1943年の冬においては、それにより、日本陸軍の方が相対的にマシな稼働率を維持していた。

 不凍液の問題、厳寒の際におけるエンジンの加熱のし易さ(非常時にほぼ限られるが、直火で温めることさえ、ディーゼルエンジンならやれなくもなかった)等々、更に冬季戦の経験の差、それらが相まった結果として、これらはもたらされた。


 ちなみに米陸軍も、アラスカでの駐屯地での経験や、シベリアでの実戦経験のノウハウから、冬季戦には優れたものを持っている。

 そういったことからすれば、いわゆる北部軍集団が、米日と北欧諸国の軍隊で構成されているのは、極めて妥当な話だった。

 話がずれたが、そういった事情が積み重なり。


「現在、サンクトペテルブルク、及びその近郊の治安維持は主に日米の海兵隊、モスクワ方面のソ連軍の反攻の第一線に備えるのが主に米軍の歩兵部隊、その後方の予備反撃部隊が、主に日米の機甲部隊か」

「ああ、もう少ししたら、春の攻勢再開に備えて、本格的に動くことになるだろうが」

「今年中に、この世界大戦を終えたいものだな」

「そうだな。年内にモスクワを占領して、来年の正月は、日本で雑煮を食べたいものだ」

 二人は更に会話した。

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