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第4章ー13

 7月20日、スターリングラード近郊に至急、建設された飛行場には、フランス軍の将兵の多くが見た覚えがない航空機が大量に到着していた。


「あの航空機群は何だ」

「マークからすれば、日米の航空隊のようだが」

 多くの将兵が疑問を覚え、周囲に尋ね、徐々に、

「艦上機を陸揚げしたものだと」

「あれだけの数を日米は保有しているのか」

 という情報が流れ、驚愕の輪が広がっていった。


 そして、この艦上機群の任務だが。

 流石に到着してすぐに出撃という訳には行かず、最初の出撃は7月23日朝になった。


「やれやれだな。確かに陸上機群に艦船攻撃のやり方を教えるより、手っ取り早いのは事実だが」

 7月23日の朝、村田重治少佐は、口では愚痴ったが、顔は完全に笑いながら飛んでいた。

「愚痴が丸聞こえだぜ。少しは口を慎め」

 それを無線越しに聞いた、海兵同期の江草隆繁少佐が揶揄した。

「それくらいにしておけ。いつ、敵機が襲い掛かってくるか、分からないのだ。何が襲ってきても、こいつで守って見せるつもりだが、戦場では何があるか、分からないからな」

 海兵で1期先輩になる板谷茂中佐が、二人をたしなめた。


 なお、村田少佐と江草少佐は「流星」を、板谷中佐は「烈風」を操って、部下を率いている。

「流星」隊の狙いは唯一つ、ヴォルガ河を航行する船舶群だ。

「烈風」隊は、「流星」を狙うソ連空軍戦闘機部隊の排除に当たることになっている。


 スターリングラードにフランス軍を主力とする連合国軍が接近して以降、ヴォルガ河を航行する船舶は、深夜にスターリングランドに最も接近し、夜の闇を利用して連合国軍の攻撃を切り抜けるのを基本行動とせざるを得なくなっていた。


 万が一、ヴォルガ河の航行に支障が生じた事態が起こることを懸念して、1941年秋に独が降伏して以降、ソ連政府は、バクー油田からグリエフ(アティラウ)を経由しての輸送路を、本格的に稼働できるようにしてしたのだが、肝心のグリエフ(アティラウ)近辺でも、イスラム教過激派のテロが実際に起き、またカザフ人のサボタージュが頻発する有様となったことから、ヴォルガ河水運は、ソ連政府にしてみれば、相変わらず命綱に近い存在となっていた。


(最も、バクー油田でも、アゼルバイジャン人のサボタージュが頻発し、また、イスラム教過激派のテロが起こるようになったことで、原油の産出量自体が減少しつつあった)


 とは言え、このような所に、艦船攻撃を得意とする日米の艦上機部隊が展開するようになっては、そのような対策は小手先に過ぎず、ヴォルガ河水運の途絶は間近だった。

 それに一部並行して走る鉄道を活用するという手段も、連合国空軍の猛威に晒されて、使用不能になりつつあった。

 

「何としても、敵航空隊の排除に努めなさい」

 リディア・リトヴァク中尉は、愛機のYak-7戦闘機を懸命に操りつつ、部下に命じた。

 相手の戦闘機は、どう見ても新型だ。

 しかも、こちらの方が数的にも劣勢にある。

 それでも、戦わねば。


「最早、ヴォルガ河を航行する船舶が途絶した瞬間、ソ連、ロシアは崩壊する」

 ロシア人の多くにとって、母なる大河といえるヴォルガ河の水運について、上官はそのように語ったし、自らもそう想う。

 そして、この航空隊の攻撃が排除できねば、文字通り、そうした事態になってしまう。


「予想通り、敵戦闘機が襲って来たな」

 板谷中佐は、敢然とリトヴァク中尉らの攻撃を迎え撃った。

「烈風」48機、「流星」48機に対し、Yak-7は24機に過ぎない。

 リトヴァク中尉達は全部で4機を撃墜したが、その代償として、Yak-7は8機が失われた。

 また、航空隊の攻撃目標となった船舶は全て沈没という結果となった。

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