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第4章ー9

「イタリア軍の山岳部隊は、何でそんなことを考えているのだ。今は世界大戦の真っ最中なのに」

「そこにそれがあるから、と英の登山家マロリーの名言のように答えるのでは」

「勘弁してほしい。そんな余裕は、バクー油田を制圧してからにしてくれ」

「もっとも本当かどうか、分からない話ですので、余り止める訳にも行きません。下手に止めると、イタリア軍のことですから、逆にムキになってやってしまいそうで」

「確かにそうか。放っておくしかないか」

 グランデス将軍は、呆れ返るような口調で、アラン・ダヴー少佐とやり取りをした。


 なお、余談ついでに書くと。

 実際、1943年6月中に、実際にイタリア山岳部隊の一部は、エルブルス山登頂を実際に果たして、イタリア国旗を山頂に掲げることに成功する。

 しかも、山頂近くにおいて、ソ連の山岳部隊と交戦して撃ち勝った上での登頂成功だった。

 これは、第二次世界大戦において、最も高高度で地上部隊が交戦した戦いとして、ギネスブックに乗り、更にムッソリーニ統領から、よくやった、と登頂成功を祝して、受勲の栄誉まで受けたが。

 イタリア以外の軍人の多く、特にドイツの元軍人らからは、流石、イタリア軍、と内心で小馬鹿にされるエピソードにもなった。

 余談が過ぎて、話がずれたので元に戻す。


「我がスペイン青軍団とフランス軍の進撃は、今のところは順調です。フランス軍の一部によって行われているヴォロネジへの攻勢が、予想外の効果を上げているようです」

「ほう。どういう理由だ」

「現在、連合国軍の北方軍集団の主力、そして、中央軍集団は総力を挙げて、モスクワを目指しています。どうやら、ソ連軍首脳部は、ヴォロネジへのフランス軍の攻勢は、それに呼応したものだ、という判断を下したようで、ヴォロネジに部隊をできる限り集めています。そのためにスターリングラードやバクー油田方面の防衛部隊の一部さえ、玉突き式に引き抜かれている模様です」

 グランデス将軍とダヴー少佐は、そうやり取りをした。


「それは有難いな。となると、スターリングラード攻略は、容易なものとなりそうか」

 作戦参謀が口を挟んだが、ダヴー少佐は、首を傾げながら答えた。

「それはどうでしょうか。流石に、ソ連軍首脳部は、スターリングラードの重要性を把握していると思われます。何しろ、スターリングラードが失われることは、モスクワ方面への部隊に対する燃料輸送路が大きく損なわれることになります」

「確かにそうだな」

 グランデス将軍も、ダヴー少佐の見解に同意した。


 さて、連合軍の南方軍集団の進撃目標だが。

 これは、セヴァストポリ要塞以外は、ソ連の戦争遂行能力について、間接的アプローチから、致命傷を与えるという目的から選ばれていた。

 具体的には、ソ連軍の燃料産出地となっているバクー油田とモスクワとの輸送路を切断して、また、バクー油田を占領することで、モスクワを防衛するソ連軍の燃料を失わせよう、という目的から選ばれていた。


 1943年春の時点で、バクー油田からモスクワへ燃料を運ぶ経路は、連合軍が把握する限り、2本しか無いといってよかった。

 1つがアストラハンからスターリングラードを経由する、主にヴォルガ河水運を活用するルートであり、もう1つがグリエフ(アティラウ)の港から、主に鉄道を活用して運ぶルートである。

 だが。


 グリエフの港、及びその周辺では、徐々にいわゆるテロ活動等が盛んになりつつあった。

 これは、連合国が陰に陽にソ連各地で行っていた民族主義、宗教原理主義が、カザフスタンにおいても高まりつつあるためであった。

 そのために、ますますソ連にしてみれば、ヴォルガ水運は重要性を増していたのである。

 バクー油田からアストラハンを経由してモスクワ等への輸送路は、厳密に言えば、鉄路もあるのですが、アストラハンからの輸送路については、ヴォルガ河を使った内陸水運がメインということです。


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