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第4章ー8

 1941年6月段階での南方軍集団の戦況説明で、2回に分けます。

 そんなある意味、奇妙な部隊の集合体が、スペイン青軍団とフランス外人部隊第2師団の編合軍と言えた。

 彼らは、他のフランス軍と肩を並べて、ハリコフ近辺からスターリングラードを5月1日から目指しだしたのだが、その進撃は、南方軍集団の中では、相対的にだが、順調だったと言えた。


「ルーマニア軍のセヴァストポリ要塞攻撃はどうなっている」

「ルーマニア軍なりに頑張ってはいるようですが、中々上手くはいっていないようです」

 進撃開始から1月余りが経過した1943年6月初め、グランデス将軍の問いかけに対し、本職である広報参謀に復帰しているアラン・ダヴー少佐は即答していた。


「その原因は」

「ずばり言うと火力不足ですな。要塞を攻撃するとなると、大火力が必要なものとなりますが、ルーマニア軍には、そこまでの火力の準備が無い。かと言って、それだけの火力を整えるとなると、莫大な金とモノが必要になります。無い袖は振れない、ということから、ルーマニア軍は、それだけの火力準備が整えられない。だからと言って、それこそ日露戦争時の旅順要塞攻防戦や、先の世界大戦時のヴェルダン要塞攻防戦の時のように、火力不足を人命で補うようなことも、ルーマニア軍にはできない。必然的にセヴァストポリ要塞攻略が手詰まりになる訳です」

 ダヴー少佐は、溜息混じりに半ば愚痴らざるを得なかった。

 とは言え。


 ルーマニア軍のセヴァストポリ要塞攻略作戦に、スペイン青軍団どころか、他の南方軍集団所属のフランス軍やイタリア軍が協力するということは、困難な話だった。

 セヴァストポリ要塞攻略に部隊や物資を割くことが、スペインはともかく、フランスやイタリアにできない訳ではない。

 だが、南方軍集団の今回の攻勢作戦、計画を立てる際に、セヴァストポリ要塞攻略については、ルーマニア軍に一任する、ということで攻勢計画は立てられて、なおかつ、現在、各国の部隊は動いている。

 更にセヴァストポリ要塞攻略に部隊を向けるとなると、督戦的な小規模な部隊では効果が上がらないし、かと言って、大規模な部隊を向けるとなると、それぞれの主力部隊の進撃に影響が出てしまう。


 連合国全ての政府、軍の意向として、年内での第二次世界大戦終結が望まれている、といってもよいこの戦況において、主力部隊の進撃に影響が出るような攻勢計画変更を、フランスやイタリアが基本的に望む訳が無かったのだ。


「しかし、セヴァストポリ要塞に関して、フランス軍やイタリア軍は部隊を向けるのは、消極的という状況にあり、我がスペイン青軍団は論外、という状況にある訳か」

 グランデス将軍は、ダヴー少佐が言わなかったことを察して、言ってくれた。

 それにダヴー少佐は無言で肯いた。


「となると、セヴァストポリ要塞に対しては、ルーマニア軍に任せて、我々は目を瞑るしかなさそうだな。他の戦況はどうなっている」

 グランデス将軍は、セヴァストポリ要塞に関して、これ以上の話を続けても、前向きな話にならないと考えて、話を切り替えることにした。


「イタリア軍の進撃は、表面上は快調に行われています。ロストフからマイコプ、グロズヌイを目指す進撃は順調と言って良く、既にマイコプの占領を果たしてはいます」

 ダヴー少佐の言葉は、表面上は喜ばしそうだったが、裏に何か言いたそうだった。

 グランデス将軍は、何かあるのか、と物問いたげな視線を向けて、発言を促した。


「何でもイタリア軍の山岳部隊が、エルブルス山の登山計画を立てているという噂が流れていまして」 

「あのイタリア軍が」

 ダヴー少佐の言葉に、グランデス将軍以下、多くの面々が呆れ返った。

 大戦中に登山をするバカ等、イタリア軍しかいない。

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