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第4章ー1 南方軍集団の死闘

 第4章の始まりです。

 いきなり、生臭い話から始まります。

 1943年4月、ようやく少しずつだが、春の暖かさを感じられるようになり、スペイン青師団の面々は春の喜びを感じるようになっていた。

 それは、南方軍集団、いや対ソ戦に従事している全ての連合国軍の将兵に共通する想いだったが、特に南欧の暖かい故郷出身であるスペイン青師団の将兵にしてみれば、尚更、痛感する想いだったのだ。


「5月になれば、恐らくだが、スターリングラードへ、更にアストラハンへの侵攻作戦の発動か」

 アラン・ダヴー少佐は、物思いに耽らざるを得なかった。

「それに連動させるのなら、もっと遅らせるのが、相当なのだろうが。何故に今の時期に、日米伊の空母機動部隊が、黒海に半ば押しかけてきて、航空攻撃を加えようとするのだろうか」

 1943年4月、連合国軍の南方戦線における攻勢は、連合国の陸軍の主な幹部が疑問を覚える方面から、まずは始まろうとしていた。


「気に食わない話だな」

 小沢治三郎中将は、(決して口には出さなかったが)そんな想いを内心で何度も反芻していた。

 日本海軍の誇る最新鋭空母「翔鶴」の艦橋に半ば仁王立ちし、その指揮下には歴戦となった7隻の日本空母を従えているのに、何故にそんな想いをしているか、というと。


「俺達はセールスマンじゃないんだぞ」

 ハルゼー提督は、不機嫌な想いを隠そうとさえせず、幕僚達は腫れ物に触るように提督に対処していた。

 ハルゼー提督指揮下の最新鋭のエセックス級空母6隻を含む米海軍の11隻の正規空母を中心とする米第6艦隊は、この時、紛れもなく世界最大の空母部隊なのに、何故にそこまで不機嫌だったのか、というと。


「何で、我々が黒海で行動する羽目になったのですか」

「うん。日米の間で仲裁役が必要だから、と英海軍に押し付けられた」

「何で自分達がやらないんですか」

「ろくな艦載機が無くて、恥ずかしいかららしい」

「まあ確かに英海軍の艦載機にろくなのはありませんが」

 伊海軍のイアキーノ提督は、幕僚と溜息混じりの会話をする羽目になっていた。


 1943年の春、連合国側の政府、軍の上層部は、ソ連、共産中国の年内崩壊は必須であるとして、第二次世界大戦終結後を見据えて、徐々に動きつつあった。

 そして、第二次世界大戦が終結すれば、当然、いわゆる「平和の配当」が必要不可欠で、そのためには大規模な軍縮が必須になる。

 更に言うなら、第二次世界大戦が終結した後、最も軍縮を迫られるのは、陸海空のどこか、というと。

 言うまでもなく、海軍だった。


 第二次世界大戦後の新世界秩序において、世界の二大海軍国である米英が対立することは、とてもありそうにない話だった。

 また、それに続く日仏伊の海軍にしても、国力が第二次世界大戦で疲弊しきっており、海軍の軍縮が真面目に政府の上層部で話し合われる有様だった。

 そう言った現実が分かっている連合国、特に日米の海軍の軍政関係者は考えた。

 駆け込みで新鋭艦を建造し、旧式艦を売却して、少数精鋭の海軍を、第二次世界大戦後に維持しよう。

 

 第二次世界大戦は、海軍の主力艦が、戦艦から空母に明確に移り変わった戦争でもあった。

 そのためにいわゆる中小国(と言っても戦艦を保有する程度)の海軍は、空母の保有を検討するようになったが、一から建造するとなると、金も時間もかかる。

 日米が旧式空母を売ってくれるなら、それを買った方が安くつく。

 いわば需要と供給が合致したのだ。

 

 その中の一つが、トルコだった。

 旧式化した巡洋戦艦ヤウズを予備役に編入して、日米何れかから空母を買いたい、という希望が内々に示された。

 その売り込みを兼ねて、日米伊の海軍は黒海に赴くことになり、小沢、ハルゼー両提督は不機嫌になったという次第だった。

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