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第3章ー15

 そして、アジアの混乱は、中国とインドだけに止まるものでは無かった。


 例えば、いわゆる仏印、インドシナにおいては、中国内戦等の混乱から徐々に武器が流れ込み、更に簡易武器の製造法まで共産中国から伝わったことから、ホー・チ・ミンらの民族主義者による独立運動が、水面下において、密かに広まりつつあった。


 また、蘭印においても、スカルノらの独立運動が、徐々に力を持ちつつあるという現実があった。


 そして、ソ連内部の民族、宗教対立を煽ることで、ソ連を第二次世界大戦において崩壊させるという連合国の国家大戦略は、いわゆる西南アジア、中近東方面においては、盛大なブーメランとなって却ってきているというのが現実だった。

 中近東においては、イスラム原理主義を唱える勢力、団体が徐々に広まっており、英仏米等の連合国側の息が掛かっている現政府が、自分達を統治しているという現実に我慢がならず、反政府運動等を行う事例が多発していたのである。

 そうした中で、そう言った対立が最も先鋭化していたのが、パレスチナだった。


 パレスチナは、半ば言うまでもないことだが、当時は英国の委任統治領だったのだが。

 ここには、エルサレムという世界の三大宗教の聖地があるのだ。

 このエルサレムの統治を巡って、基本的にユダヤ教徒とイスラム教徒が対立し、(やや細かく言えば、宗派間の対立があるので、単純には言い難いが)キリスト教徒は漁夫の利を得ようと画策しているという現状があった。


 だが、更に細かく見てくると、様々な歴史的経緯が、完全に治りきっていない生傷のかさぶたのように現れてくる、何とも微妙な状況を呈していた。

 そのために、すぐに手を出さなくてよい、切羽詰まっていない者は誰もが下手に手を出すことをためらう一方で、逆に切羽詰まった者が、後先を考えずに行動して、更に事態を混迷に陥らせて、状況を悪化させる事態が多発しているという現状があったのだ。


 従前に述べたことだが、それこそ紀元前やローマ帝国が健在だった頃はともかくとして、少なくともイスラム教が誕生して、イスラム帝国が建国されて以降は、パレスチナの住民の多くが、イスラム教徒だったことは間違いない事実だったが。

 その状況を変えたのが、19世紀末に発生したユダヤ教徒の間で発生したシオニズム運動だった。

 この運動により、パレスチナの地にユダヤ教徒の国家を作ろうという動きが、現実世界で発生するようになったのだ。

 

 更に第二次世界大戦の勃発に伴う民族主義の高揚。

 中東欧では、ユダヤ教徒に対する迫害が公然化し、その迫害から免れるために「約束の地」であるパレスチナを目指すユダヤ教徒が急増した。

 しかし、そこには既にイスラム教徒が、多く住んでいる。

 最初の頃は、通常の土地の売買等により、ユダヤ教徒はパレスチナに入植していったが。とても、それでは追いつかなくなり、イスラム教徒の土地を強引に奪い取ろうとする例が多発するようになった。

 皮肉なことにパレスチナの地では、これまで迫害された側が、迫害する側に回るようになったのだ。

 そして、今やパレスチナの地では、いわゆる低強度紛争が発生するようになっていた。


 これに対し、連合国側では、宗教対立を和らげるという観点、また、対ソ戦の問題から東方正教会を重んじているという立場を示す必要性もあったことから、この問題について、コンスタンティノープル総主教等に仲裁を主に委嘱したが、このことがローマ教皇庁の反感を買ってしまうという事態を引き起こした。

 この主にパレスチナを中心とする中近東の宗教問題は、第二次世界大戦終結後、長きにわたり、尾を引くことになり、米英仏伊日等諸国が苦悩する問題となる。

第3章は、これで終わり、次から、連合国軍の南方軍集団の戦いを中心に描く第4章になります。


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