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第3章ー12

 だが、現実問題として、そのような中国の民衆の中で、日米を中心とする連合国軍への抗戦意思を持ち続ける者は、ほぼ死に絶えていた。

 そして、共産中国政府首脳部が、成都から脱出したことを知った米軍は、血眼になって、共産中国政府首脳部を追い求め、それに対して、共産中国政府首脳部も、懸命に潜伏を試みようとしたらしいが。

 実際のところ、共産中国政府首脳部の最期は、謎めいたままとなっている。


 共産中国政府首脳部が、成都から西方へと、地下に開削していた秘密の脱出路を通じて、脱出を果たしたことまでは、複数の生存者の証言があり、ほぼ間違いないものとされている。

(もっとも、その証言をした生存者全員が、1年も生き延びることなく、共産中国政府に最後まで忠誠を誓った漢奸であるとして、蒋介石政府により、拷問の末に虐殺されており、その信憑性について、検証のしようがないというのも、更なる現実なのだが)


 だが、その後の信憑性のある足取りが、ほぼ途絶えてしまっているのだ。

 そのために、その最期については諸説あり、信憑性の乏しい証言(?)が複数、伝えられている。

 そうした中で、もっとも信憑性の高いとされているのが。


 成都から西方に脱出した共産中国政府首脳は、チベットからウイグル、更にモンゴルを抜けて、シベリアへの長征を目論んだが、その途上で、チベット兵の遊撃隊と遭遇し、全員が殺戮された。

 そして、その遺体は鳥葬にされてしまった、というのである。


 この証言をしたのは、あるチベット兵の遊撃隊の隊長である。

 それなりに金目のものを持っていそうな中国人、漢族の武装した小集団を見つけ、何者か、と誰何したところ、こちらの兵力が多いことに気付いて慌てて逃亡しだしたので、怪しいと考えて、攻撃を加えた。

 彼らは最後まで抵抗を止めずに応戦して、逃げようと試みたが、自分達は彼らを全員、死に追いやった。

 彼ら全員が死んだ後、身元が分かる物が無いか、部下と共に漁って、幾つかの書類が見つかったが、結局のところ、漢字がろくに読めない自分達では分からなかった。

 それで、金になりそうな衣装等は戦利品として、持ち帰ることにしたが、金にならないと考えた書類とかは運ぶのも面倒だし、全部、暖を取るために燃やしてしまった。

 そして、彼らの遺体は全て鳥葬で葬った、という証言である。


 この遊撃隊の隊長が、その際の戦利品として持っていた衣装等を、米軍が入手して調査した結果、極めて上質の品々であり、更にその衣装の種類等から、共産中国政府の複数の幹部の物ではないか、と判断されたのだが、何しろ遺体を確認して、最終的に判断しようにも、その遺体は、鳥が食べてしまっている。

 従って、最終的な判断は無理と、米軍(及び日本軍や蒋介石政府等)は判断するしかなかった。


 ともかく、成都陥落後、杳として共産中国政府のほとんどの幹部の足取りはつかめなくなってしまった。

 そのために、少し後の話まで含むことになるが。

 蒋介石政府は、中国全土で共産中国政府の幹部の足取りを、それこそ21世紀に至るまで追い求めることになるのだが、共産中国政府の幹部の多くが、未だに未発見のままとなるのである。


 ちなみに、そういった様々な話を伝え聞き、また、情報を把握した簗瀬真琴中将だが。

 何で、ここまでの事態になる前に、共産中国政府首脳部は、無条件降伏に応じてくれなかった、という想いがしてならなかった。

 少しでも早く共産中国政府が、無条件降伏に応じてくれれば、中国の民衆がそれだけ助かった筈だ。

 それなのに。


 自らの命のためなら、民衆が何人死のうと構わないという事だったのだろうか。

 何故に、共産中国政府はここまで戦い続けたのだろうか。 

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