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第3章ー2

 1942年の秋から1943年の春に掛けて、米陸軍航空隊の戦略爆撃は、中国奥地において猛威を揮うことになった。

 なお、この頃、日本空軍の重爆撃機部隊は、基本的にソ連欧州本土に向けられており、稼働可能な部隊は、サンクトペテルブルク周辺にほとんどが集められていたことから、中国奥地に対する戦略爆撃を行うのは、ほぼ米陸軍航空隊のみに近い、という事態が引き起こされていたのだ。

 そして、米陸軍航空隊の戦略爆撃が猛威を揮った結果。


 この頃、共産中国の統治領域において、大規模な工場地帯は、存在しない有様となっていた。

 市街地の規模が、やっと1万人に達するか、達しないか、というような小規模な市街地でさえ、一度は米陸軍航空隊の大爆撃の矛先が向けられる有様となっていたのだ。

 こういった状況のために。共産中国政府は、武器製造工場等の小規模、分散化を図らざるを得なかった。

 だが。


 既述のように、既に物資の輸送は人力頼み、というのが、共産中国政府の統治領域における現実である。

 そうした中で、工場の小規模化、分散化を行うということは、ますます武器製造等の効率を落とす事態を引き起こすことに他ならなかった。

 また。


 米陸軍航空隊の戦略爆撃は、都江堰を始めとする灌漑設備にも向けられたし、更に枯葉剤散布等さえも行わているという現実があった。

 こういった攻撃が行われるということは、結果的に農業生産が停滞し、農地の荒廃が引きこされる。

 それに共産中国政府の政策が、更に追い打ちを駆けることさえ起きた。


 前話で少し書いたが。

 松根油の製造や、避難住民が暖をとって生き延びようとしたこと等から、中国奥地においては、無計画な森林の伐採が相次いで多発した。

 これは表土の流出を招き、更に、それが農地に流れ込むことにより、農地の更なる荒廃を招いた。

 そして、荒廃した農地を復旧しようにも。


 共産中国の領域内では、既に若い健康な男性のほとんどが、兵隊として前線に送り込まれて、亡くなっているのが現実だった。

 そして、日米を中心とする連合国軍の侵攻を少しでも遅らせるために、少しでも兵隊として戦えそうな少年や若い女性、中高年の男性さえも、兵隊として半ば強制的に志願せざるを得ない現実があった。


(なお、共産中国政府は、あくまでも少年や若い女性、中高年の男性といった、本来は兵隊にならなくてすむ者達は、愛国心に燃える余り、自発的に志願してきた、という建前を崩さなかった。

 だが、兵隊に志願しなければ、食糧配給等において、非国民であるとして、自分以外の家族にまでも、あからさまな差別が行われていては、兵隊に志願しない訳には行かない、というのが現実ではないだろうか)


 従って、農地の復旧に努められるのは、文字通り、12歳以下の少年少女や、40歳代半ば以上の女性、60歳代以上の男性というのがほとんど、というのが現実だった。

 こういった面々では、農地復旧も体力的に一苦労、という事態が起きてしまう。

 更に、そういった人手不足の中、農産物の増産や松根油の製造等が、遺された住民には求められるのだ。


 現実的に考えて、そう言ったことが遺された面々だけで出来る訳が無かった。

 戦略爆撃の効果も相まって、農産物を始めとする各種生産物は減る一方だった。

 そういったつらい現実の前をしても、共産中国政府による農産物の強制供出は続けられた。

 何故なら、それが無ければ軍隊の維持ができず、連合国軍の侵攻を阻止できないからである。

 そして、共産中国軍は、住民に銃剣を向けての農産物供出を求めるようにもなっていった。


 こういった情報を把握した米内光政首相らは、共産中国政府に無条件降伏を勧告したが、それは拒絶されていた。

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