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第3章ー1 中国戦線等

 第3章の始まりです。

 第3章では、主に中国本土の戦線について描くと共に、それ以外のアジア(東南アジアからボスポラス海峡に至る)の状況を描く予定です。

 従って、この世界のパレスチナ情勢にも触れる予定です。

 1943年春、中国戦線において、日米を主力とする連合国軍は、共産中国軍に対する最終攻勢を発動しようとしていた。

 この時、成都を現在の臨時首都とする共産中国は、なお、四川省等の中国奥地を支配地域として維持はしていたが、その支配地域の統治の内実は悪化する一方だった。


 まず、日米の戦略爆撃により、鉄道網は完全に機能しなくなっており、そういった事情から、どうせ鉄道が運行できないのなら、という理由から、多くの線路が兵器製造のための鉄材に転用される事態さえ発生するという状況に陥っていた。

 そう言った状況では、自動車の維持も、当然のことながら、困難な話になる。

 何とか動いている自動車は、木炭自動車ばかりというのが、共産中国の現実だった。

 そして、牛馬等は食料として食い尽くされてしまったと言っても良い有様だったために、物資、特に民間の物資の輸送手段は、人力頼みに完全に転落していた。


 更に問題なのは、合理的な判断よりも、場当たり的な判断、精神論的な判断が、特に政府上層部において、かなり横行するようになっていたことだった。

 例えば、航空隊を運用する油が無いとして、それなら、松根油を大量に製造したらどうか、という提案が真面目になされて、実行されるようになっていた。

 だが、松根油を製造するとなると。


 そのための釜を作らないといけないし、その松の根の採取等のために大量の人手を使わねばならない。

 それらを勘案すると、松根油を製造する手間暇を考えたら、その人手を食糧増産に使った方が合理的なのではないか、という声が挙がったが、航空隊の維持等には松根油が必要だ、という声に圧し潰されてしまった。

 更に製造された松根油は、実際にはとても航空機の実際的な運用に使えないことが判明したが、今更、松根油の製造を中止しては、政府の政策の誤りを認めることになる、ということから、更なる松根油の増産が指示されるという判断がされる有様となっていた。


 しかし、それによってもたらされる悪影響は多大なものがあった。

 既述のように、松根油を生産するためには、松の根を採取し、それを釜で乾留し、等々の手間暇が必然的にかかるのだ。

 従って、それにより、農地の手間暇が疎かになるという副作用が生じる。

 つまり、農業生産物の減産を、ほぼ必然的に招いてしまう。


 現場を知らない政府上層部は、松根油を生産する一方でも、農業生産物が減産するというのは、現場の農民の怠慢のせいであり、更にそれを指導する者が悪いとして、現場の締め付けを図った。

 これは、現場、住民の間における絶望を招いた。


 また、この当時、共産中国政府は、住民に対して、連合国軍に対して、現地での徹底抗戦を指示し、基本的に住民の避難を認めていなかったが、そうは言っても、連合国軍の侵攻の前に、様々な伝手による奥地への住民避難、脱出が絶えることはなかった。

 だが、こういったことを政府が基本的に認めていない以上、こういった避難住民は、半ば必然的に闇の存在にならざるを得ない。

 そして、避難住民と言えども、生き延びるためには、食べざるを得ない以上。

 こういった避難住民による窃盗等の犯罪が多発するようになり、元からいる住民の間にまで、民心の荒廃が深刻になり、絶望がはびこるようになった。


 共産中国の統治領域内では、こういった絶望が積み重なったことから、住民の間では、今を生き延びられればいい、という刹那主義的な考えが増える一方だった。

 更に、民心を荒廃させることがあった。

 それは、中国奥地に対する米陸軍航空隊の大規模な戦略爆撃による広汎な被害の発生である。

 その余りにも広汎な被害は、中国奥地にいる民心の荒廃を深刻化させていった。

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