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第2章ー30

 結果的にはだが、このハリコフ南方のソ連軍、約40万人を掃討、壊滅させるのには、連合国軍の南方軍集団は約1月余りをかける羽目になった。

 それ程、2月の厳寒は連合国軍の攻勢に困難をきたすものだったのだ。

 だが、裏返せば、厳寒以外に、連合国軍の攻勢を阻むものは無いと言って良かった。


 それ程、フランス第6軍と、ハリコフ救援に赴いたスペイン青師団とフランス外人部隊第2師団の面々が、ハリコフ東南で手を結んだことによって生じた、ハリコフ南方のソ連軍の補給物資の欠乏は、ソ連軍を苦しめるものとなってしまった。

 幾らソ連軍の将兵が、ソ連、ロシアの寒さに慣れているとはいえ、寒さに耐えるには、それなりの物資が必要不可欠である。


 例えば、大量の食糧や水分を執らないと、そもそも体温維持さえ、厳寒の中ではままならないのだ。

 そうした状況において、飢餓状態に置かれては。

 ハリコフ以南のソ連軍将兵の間で、栄養失調に伴う低体温症による戦病死、要するに餓死以前に凍死に至る例が多発するのも、やむを得ない話ではないだろうか。


 この主にハリコフを巡る連合国軍の南方軍集団へのソ連軍の冬季攻勢の結末だが。

 一応、2月初めには大勢が決まっていたものの、2月末までダラダラとした戦いが続いた末についた。

 それは主に上記の事情から、連合国軍側に積極的に攻勢に出る力は無く、それ以上にソ連軍も将兵の脱出に懸命になったという事態から生じたものだった。


 戦略的には、1月のソ連軍の冬季反攻開始の時点とほぼ同程度の戦線回復を、連合国軍の南方軍集団は2月末の時点で果たしており、引き分け、または連合国側の小勝利という結果だったと、連合国軍もソ連軍側もみなす結果となった。

 一方、戦術的には、双方がおびただしい血を流した末の痛み分けと言って良かった。


 ソ連軍は、この攻勢に参加した将兵、約80万人の内約20万人が、戦死又は(餓死又は凍死を含む)戦病死したとされる。

 また、約20万人が、連合国軍の将兵に投降して虜囚の路を選んだ。

 この攻勢を生き延びた、それ以外の将兵にしても、半数近くが凍傷等を負った、というのが通説であり、春の泥濘期到来や連合国軍側の損害に伴う再編制によって、南方軍集団と対峙していたソ連軍は、一息吐けたというのが、本当のところだった。


 連合国軍の将兵の損害も、軽視できないものがあった。

 この戦いに参加した連合国軍の将兵、約80万人のうち、約30万人が凍傷等により死傷したとされる。

 こちらは相対的に補給状態が良好だったので、戦病死者を含む戦死者は何とか10万人を超えずに済んだが、それでも多数の将兵が死傷したことに変わりはなく、こちらも壊滅と判断されても仕方なかった。


 アラン・ダヴー少佐は、2月末、特別混成大隊長としての任務を解かれ、スペイン青師団の広報参謀に復帰していた。

 グランデス将軍を始めとするスペイン青師団司令部の面々の顔色は、基本的に渋い顔、憂い顔が揃っている有様だった。


 今回の戦闘の結果、スペイン青師団も、膨大な死傷者を出している。

 優良な防寒装備を揃えていたとはいえ、そして、基本的に潤沢な補給物資が届いたとはいえ。

 スペイン青師団は、ソ連軍の東方脱出を阻止する、という武勲を挙げた代償として、約10万人の将兵の内約3万人の戦死傷者を出して、壊滅に近い有様を呈した。

 その代り、「スペイン青師団は、自発的以外の退却は1ミリもしない」という伝説を護り抜けた。


 ダヴー少佐は想った。

 まるで、我々は、ヴェルダン要塞攻防戦が終わった後の日本海兵隊のようだ。

 だが、あの時と違って、この戦争は終わりが見えつつある。

 少しでも多くの将兵をスペインに連れ帰りたいものだ。

 第2章の終わりです。

 次から幕間に入り、半日常パートになります。

 

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