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第2章ー29

 1月29日朝を期して、ド=ゴール将軍は、そう言った事情を勘案した末、東南方向へのフランス第6軍の攻勢命令を発した。

 この攻勢は、完全にソ連軍の意表を衝くものとなった。

 いや、当事者であるフランス第6軍とスペイン青師団、フランス外人部隊第2師団以外、全てが意表を衝かれたといっても過言では無い攻勢となった。

 敵中突破に半ば活路を求めるハリコフから東南方向への攻勢を、空輸による補給が届いているとはいえ、陸路からは孤立しているフランス第6軍が執る等、それ程、誰もがあり得ないと考える攻勢、行動だったのだ。


「ド=ゴール将軍が発狂した」

 そんな噂が、味方の筈の南方軍集団内部で流れる有様だったが、この効果は絶大だった。

 1月30日の夕刻、フランス第6軍の先鋒を務めたフランス外人部隊第1師団は、スペイン青師団の先鋒を務める特別混成大隊と邂逅を果たした。

 それは、ハリコフの包囲が解かれ、逆にハリコフの包囲攻撃に当たっていたソ連軍の、ハリコフ南方から東方への退路が断たれた瞬間でもあった。

 ハリコフの南方にいたソ連軍は、ハリコフの西方を迂回するか、強引に東方への突破攻撃を図るか、しかない状況に陥ったのだ。


「ダヴー閣下」

「そんな敬称で呼ぶな。自分は少佐だ」

 1月30日の夜、フランス外人部隊第1師団のかつての部下達が、アラン・ダヴー少佐を取り巻いて歓談し、そんなやり取りをしていた。


「いや、何れはそうなるでしょう。私の家名を賭けてもいい」

 ルイ・モニエール中尉が、半ばささやくようにダヴー少佐に言った。

「モニエール中尉の家名を賭けられては、私は将軍を目指さざるを得ませんな」

 ルイ・モニエール中尉の真の家名が、ボナパルト家であり、また、ルイ・モニエール中尉の正体が、ナポレオン6世であることを知る、ダヴー少佐は神妙な顔をして、そう答えざるを得なかった。


「この後は、どうなりますか。今回の戦闘における我々の勝利は確定的ですか」

「いや、東方へのソ連軍の脱出阻止を果たさねば。それが果たせれば、我々の勝利だ」

 別のかつての部下の問いかけに、ダヴー少佐はそう答え、他の面々も肯いた。


「東方からの補給路は、今やハリコフ南方のソ連軍には失われた。燃料補給等に、今度は彼らが苦しむ状況に陥った。これまでの報復を果たさねばな」

 ダヴー少佐の半ば演説は、かつての部下に加え、今の部下達も納得するものだった。


 実際、このフランス第6軍の東南方向への攻勢実施と、その大成功によるスペイン青師団等と連携したソ連軍の東方への退路、補給路遮断は、多大な効果をハリコフ南方に展開していた約40万人のソ連軍の将兵に与えていた。

「(燃料を始めとする物資欠乏により)全車両動かず」

 そんな半ば悲鳴じみた電文さえ、ハリコフ南方のソ連軍から発せられる有様となった。


 南方軍集団総司令官のジロー将軍は、こういった状況に鑑み、容赦のない攻撃を、補給欠乏に苦しむようになったハリコフ南方のソ連軍に対して加えた。

 それに対し、ハリコフ南方のソ連軍も、懸命に抗戦した上での脱出、退却を図ろうとした。

 当然のことながら、その矢面にスペイン青師団やフランス外人部隊第1、第2師団の面々は立つことにならざるを得なかった。


「10両の戦車より2両の突撃砲の方が、こういった戦闘には役立つな」

 ダヴー少佐は、今やスペイン青師団の将兵にとって、頼りがいのある戦友(カメラード)と化した3号突撃砲をそう評価していた。

 何とか燃料をやり繰りして戦線突破を図るソ連軍戦車部隊に対し、優位にスペイン青師団の3号突撃砲部隊は戦いを進めている。

「このままいけば、何とか勝ちを収められそうだな」

 ダヴー少佐はそう考えた。

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