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第2章ー26

 このフランス第2外人部隊師団に、スペイン青師団のグランデス将軍は目を付けていた。

 フランス第2外人部隊師団は、(既述の複雑な事情により)ドイツ人から編制された外人部隊の象徴ともいえる部隊であり、その宣伝という理由もあって、ルノー43戦車というフランスでも最新鋭の戦車が積極的に提供され、事実上の機甲師団と化していた。

(それに、精鋭を集めようと、元ドイツ軍の軍人という経歴を持つ者を優先して集めたため、尚更、フランス第2外人部隊師団は強力な部隊となっていた)


「スペイン青師団は、機甲戦力が不足した歩兵師団だ。ソ連軍の強力な反撃が予想される側面援護任務を行うのには、我々を支援する機甲師団が必要不可欠である。そのために、フランス第2外人部隊師団を、我々に提供されたい」

 そう、グランデス将軍は、南方軍集団総司令官であるジロー将軍に掛け合った。

「それは、もっともな理由だ」

 ジロー将軍も、グランデス将軍の理屈を、もっともと認め、フランス第2外人部隊師団は、スペイン青師団と共闘することになった。


(後、ジロー将軍は、口には出さなかったが、ハリコフに最初にたどり着く部隊を、純粋にフランス人の部隊にしたい、と国威発揚の点から考えており、フランス第2外人部隊師団は、その点から、いわば継子の部隊と言えたのもあった。

 スペイン青師団と共闘させることで、フランス第2外人部隊師団のハリコフへの一番乗りを、ジロー将軍は阻止しようとしたのだ)


 フランス第2外人部隊師団を手に入れたグランデス将軍は、ダヴー少佐と密談した。

「ハリコフ救援作戦において、側面援護を成功させるだけでも、充分な軍功と言えるが、ハリコフへの一番乗りをしたい。フランス第2外人部隊師団と共闘して、何とかならないか」

「十二支のネズミ作戦で行きますか」

「どういうことかね」

 グランデス将軍は、日本の昔話を知らなかったので、ダヴー少佐の返答に困惑した。


「単純な方法です。フランス第2外人部隊師団を先鋒に立てて、私が指揮する特別混成大隊が共に進むのです。最後の段階で、特別混成大隊が最先鋒に立って、ハリコフ救援作戦を果たしましょう」

「ふむ」

 ダヴー少佐の考えは、グランデス将軍を唸らせるに足るものだった。


「後、先日の電文の仕込みの効果に期待しましょう。ハリコフ内部の部隊が、我々と手を結びたがれば、相対的に我々が一番乗りに成功する確率が高まります」

「どういうことかね」

「ハリコフ籠城軍が、東南方向への脱出を図れば、我々は容易に手を結ぶことが出来ます」

「東南方向だと。それは半ば敵に向かう方向ではないか」

 グランデス将軍は、絶句した。

 実際、ハリコフ救援作戦は、ハリコフの西南方向を救援作戦の主方面として、計画立案されている。


「サムライの退却は、敵中を突破して、前進して退却するものです。それによって、敵の虚を衝いて、退却に成功するのです。それと似たようなことが、フランス陸軍なら可能でしょう。何しろ、フランス陸軍は、日本海兵隊、サムライの師匠ですから」

 ダヴー少佐は、グランデス将軍の説得に掛かった。

「成程、弟子にできて、師匠にできない訳が無い、という訳か」

 グランデス将軍は、苦笑して答えたが、幾らサムライと言えど、出来る訳が無い、という顔をしている。

 だが。


 ダヴー少佐は、自信を持って答えた。

「ド=ゴール将軍は、自己顕示欲の塊ですから。煽れば、その通りに動く公算が大です。それに」

 ダヴー少佐は声を潜めて、グランデス将軍にささやいた。

「ハリコフには、フランス国王陛下とフランス皇帝陛下がおられます」

「確かに」

 グランデス将軍も、その事実を想い起こした。


「では、やるか」

「はい」

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