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第2章ー25

 だが、このⅤ号戦車開発は、様々な理由から迷走することになる。

 その理由は幾つかあるが、最大の理由は、ドイツ陸軍内部で1940年当時、陣地突破用の重戦車として開発予定だったⅥ号戦車開発計画とⅤ号戦車開発計画の関係だったのは、間違いないらしい。

 つまり、零式重戦車対策を考えるならば、どちらかの戦車を優先して開発すべきではないのか、いっそのこと、どちらか一本に絞るべきでは、という論争がドイツ陸軍内部で起こり、最終的にヒトラー総統の裁断により、両方を並行して開発を進めることになったのだ。


 もっとも、必ずしも両方進めるという考えが間違っていたとは言えない。

 もし、一本に絞った後、やはり間違っていました、別の開発計画を進めましょう、ということになっては、開発計画の遅延を招くことになるからだ。

 だが、結果論が多分に含まれるが、Ⅴ号戦車の開発については、これは害を招くことになった。


 Ⅴ号戦車については、この当時、M1897野砲を転用して主砲にしていた零式重戦車(前期型)を圧倒できる新型戦車砲を搭載することになり、75ミリ70口径砲、Kwk42L/70の開発が進められ、それを搭載することになった。

 一方、Ⅵ号戦車については、ほぼ既存の88ミリ高射砲を転用したと言えるKwk36L/56を搭載することになった。

 そのために。


 Ⅵ号戦車については、増加試作が1941年秋のベルリン陥落時点までに何とか間に合った。

 そのために真偽不明の半ば伝説と化した話ではあるが、ベルリン陥落に際し、ドイツ陸軍にはⅥ号戦車を装備した戦車部隊が少数だが存在して奮戦し、米軍の戦車を多数撃破して、ドイツ戦車部隊の最期の凱歌、白鳥の歌を高らかに叫んだ末にヴァルハラに旅立った、とされる。


 その一方、Ⅴ号戦車は、試作戦車は何とか間に合ったものの、ベルリン陥落までに量産化できなかった。

 ドイツ救国の新戦車となることを期待されつつ、亡国までに開発が間に合わなかった悲運の戦車に、Ⅴ号戦車はなったのだ。

 本来なら、この時点でⅤ号戦車は消えていた筈だった。

 だが。


 対ソ戦、ソ連欧州本土侵攻作戦を前に、フランス陸軍は頭を痛めていた。

 この当時のフランス軍の主力戦車、ルノー41戦車は、日米の技術協力を得て開発されたものであり、文句なしにこの当時のT-34戦車等のソ連戦車と対抗可能だったが、それは現時点での話であり、将来のソ連軍の新型戦車にも対抗可能とは考えられてはいなかった。

 そのために、後継戦車の開発が、フランス陸軍では急務だったのだが、その戦車の具体像が全く見えていなかったのだ。

 そういったところに、ドイツ陸軍のⅥ号戦車、Ⅴ号戦車の情報が、フランス陸軍に入ってきたのだ。

 フランス陸軍は、ドイツ陸軍のⅥ号戦車、Ⅴ号戦車を新型戦車の開発の参考に活用することにした。

 そして。


 Ⅵ号戦車は、ドイツ陸軍の著名な高射砲だった88ミリ高射砲を転用して戦車砲としており、フランス陸軍としては採用が躊躇われるものがあったが、Ⅴ号戦車は、新開発の75ミリ長砲身戦車砲を採用しており、その点からの問題は回避されていた。

 また、機動力の面からも、Ⅴ号戦車の方が、Ⅵ号戦車を上回っていた。

 そうしたことから、フランス陸軍の新型戦車は、Ⅴ号戦車を参考に開発され、ルノー43戦車という名称で制式採用されることになったのだ。


 対ソ戦、ソ連欧州本土侵攻作戦勃発には、ルノー43戦車の開発はともかく、量産化は間に合わなかったが、1942年秋以降、フランス、ドイツ国内の生産が順調に進むようになった。

 そのために、ハリコフ救援作戦において、フランス第二外人部隊師団は、ルノー43戦車を装備できていたのだ。

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