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第2章ー21

 機内にいる野中五郎大尉が、そんな想いをしていること等、実際に荷物の積み下ろしをしているフランス軍の将兵にしてみれば、全く関係のない話だった。

 ハリコフ、及びその近郊に孤立しているフランス軍の将兵にしてみれば、日米の戦略爆撃機を駆使した航空輸送が、自らの命綱に完全になっているのが、現実の話だった。

 それこそ、日米の戦略爆撃機群が、天からの使いにさえ見える有様だったのだ。

 そして。


「空輸様様だな」

 ルイ・モニエール中尉こと、ルイ・ナポレオン・ボナパルト、ナポレオン6世は、そう呟きながら、荷物の積み下ろし作業を指揮していた。

 主に日米の戦略爆撃機群を活用して行われている、ハリコフ及びその近郊へのフランス軍に対する空輸作戦は、1月25日現在、順調に進んでおり、ハリコフに孤立して、本来なら物資欠乏に喘がざるを得ないフランス軍が最低限必要な量以上の物資を、結果的には運んでいる。

 そのお陰で。


「ハリコフを重包囲下に置けば、ハリコフにいるフランス軍は弱体化する、と考えていたのだろうが。ソ連軍の目算は完全に狂っているようだな」

 ナポレオン6世は、そのように現状を判断しており、実際、その判断は誤ってはいなかった。

 ハリコフ救援に向かいつつある、フランス軍とスペイン青師団の連合部隊を、ソ連軍は積極的に迎え撃ちたかったが、ハリコフに孤立している筈のフランス軍は、十二分に戦力を維持しており、ソ連軍が、ハリコフ救援軍に全力を注ごうとすれば、いわゆる背後からの一刺しが行われる危険が高まる現状にあったのだ。

 そのために、ソ連軍は、背後、ハリコフに孤立しているフランス軍を警戒しつつ、ハリコフ救援に向かっているフランス軍、スペイン青師団に対処せざるを得なくなっていた。

 だからと言って、ハリコフ救援に向かうフランス軍、スペイン青師団が戦況を楽観視は出来なかった。


「余の辞書に不可能の文字は無い、とある方は言われたが。血縁のあの方はどう思われているかな」

 そんなことを、アラン・ハポン少佐ことアラン・ダヴー大尉は考えていた。

(以下、主に階級の混乱等を避けるため、ダヴー少佐と書く)


 ダヴー少佐は、スペイン青師団が臨時編制した特別混成大隊の大隊長に、グランデス将軍の特命を受けて任命されている。

 突撃砲中隊1個、歩兵中隊3個等を基幹とする特別混成大隊は、スペイン青師団において、最精鋭部隊の名を冠するに相応しいものといえ、ダヴー少佐が、その長に任命されたのは、グランデス将軍が特に目を掛ける程、優秀なことの証とまで言えた。

 そして、特別混成大隊の主任務は何か、というと。


「ハリコフにいるフランス軍の救援任務か。グランデス将軍等、スペイン青師団の上層部としては、ハリコフへの一番乗りを、スペイン青師団が果たすことで、他の連合国に対し、スペインの名を轟かせて、この世界大戦後に、スペインへの引け目を感じさせたいのだろうな」

 そこまで、ダヴー少佐は穿った見方をしていた。

 もっとも、必ずしも間違った見方とは言えない。

 グランデス将軍等の思惑は、実際にそこにあったからだ。


 更に細かいことを言えば、ダヴー少佐が、特別混成大隊の長に任命されたのも、後々のことまでグランデス将軍らが考えたからだった。

 ダヴー少佐は、元々がフランス陸軍所属である。

 だから、ハリコフ救援に張りきったのは、元の所属のためだ、という言い訳が後でできるのだ。

 それに、ハリコフ籠城軍、救援軍の主力は、フランス軍なのである。

 スペイン青師団は、本来から言えば、頑張る必要は無いとも言えるのだ。


「上手く行けば、と言ったことなのだろうが」

 ダヴー少佐はそう思ったが、後で莫大な配当を貰うことになる。

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