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第2章ー18

 連合国軍のハリコフ救援作戦は、南方軍集団司令部自らが当たることになり、フランス軍のジロー将軍が全権を握ることになった。

 この時、南方軍集団の兵力は、表面上は300万人余りがいたが、実際にハリコフ救援作戦に差し向けられる部隊の兵力となると。


「クリミア半島方面からは、スペイン青師団しか引き抜けないか。ルーマニア軍は、クリミア半島方面の守備、及びセヴァストポリ要塞攻略準備で手一杯ということか」

「それ以外の地方、ウクライナの中西部においても後方警備に、ある程度の部隊は充てる必要があります。また、ロストフやクルスク方面に展開する部隊を、完全にハリコフ救援作戦に転用する訳には行きません」

「それに、凍傷患者が南方軍集団全体で、大量に発生しています。凍傷で入院中の将兵を、最前線に向かわせる訳には行きません」

 そんな議論が、南方軍集団内部で交わされた結果。


「ハリコフ救援作戦に向けられる兵力は、スペイン青師団約10万名を併せても、約50万名がやっとか」

「ハリコフには約30万名のフランス軍がいます。彼らと戦力を併せれば、約80万名です」

「しかし、既にかなりの戦力が損耗しているとはいえ、ソ連軍の兵力は約80万名がハリコフの攻囲作戦に参加しており、その縦深も最も短い所でさえ50キロ余りに達している。それだけの距離を突破して、ハリコフに、我々はたどり着けるのか」

 南方軍集団司令部では、ジロー将軍以下の面々が頭を抱え込む事態となった。


 兵力だけを比較すれば、何とかハリコフ救援作戦は成功できるのではないか。

 この時に、南方軍集団総司令部、特にフランス軍内部では考えられていた。

 だが、その後が問題だった。

 イタリア軍の忠告を、半ば無視した為に、このような苦境に陥ったのは、誰も口には出さないが、自明の理と言える有様だった。

 

 だからこそ、ハリコフ救援作戦は、フランス軍にとって完全でなければならなかった。

 ハリコフにいるフランス軍を救援し、ハリコフを保持し続けることで、ハリコフを早期に放棄すべきだったというイタリア軍等の非難をかわす必要が、フランス軍には面子の問題からあったのだ。

 ハリコフ救援に成功したものの、ハリコフ防衛軍は全面退却を余儀なくされました、では、何で速やかに退却することで、兵を救わなかった、という非難が噴き出し、フランス軍の面子が潰れかねない。


「順番に物事は考えよう」

 ジロー将軍は、空気を変えるために発言した。

「まずは、ハリコフに孤立しているフランス第6軍を維持することだ」

「確かに。フランス第6軍の戦力が健在なら、ソ連軍は後方を気にしないといけなくなります」

 幕僚の一人が、調子を合わせて言った。


「そのために、非常の手段を執る。いや、味方に協力を求める」

 ジロー将軍は、(わざと)笑みを浮かべて言った。

 将軍の真意が分からず、幕僚達は顔を見合わせた。

「我がフランス空軍の保有する輸送機では、空輸でフランス第6軍を維持することは不可能だ。そのために日米の航空隊に協力してもらう。彼らにしても、友軍の救援依頼を無視はできまい」

 ジロー将軍は、意味深の発言をした。


 幕僚の一人が、ジロー将軍の真意を質すために、敢えて言った。

「どういうことなのですか」

「日米の戦略爆撃機部隊を、ハリコフへの空輸による物資輸送に活用してもらおう。実際問題として、ハリコフにいる部隊を維持しようとするとなると、1日最低300トン、できれば700トンを空輸で運ばねばならない。それが可能なのは」

「日米の戦略爆撃機部隊だけ、ということですか」

 別の幕僚が得心したように言った。


「そうだ。我々は彼らの協力を得て勝つしかない」

 ジロー将軍は、断言した。

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