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第2章ー6

「何とか、たどり着けたな」

 日本陸軍が誇る第2機甲師団が保有する戦車大隊の一つ、第1戦車大隊長を務める島田豊作少佐は、そう独り言を言っていた。

 島田少佐の率いる第1戦車大隊は、ようやくこの戦場にたどり着けた日本陸軍の新型戦車、3式中戦車に全ての戦車が更新されている。

 3人用砲塔を搭載し、主砲を1式中戦車の57ミリ長砲身砲から、海兵隊の誇る百式重戦車後期型と同様の76ミリ戦車砲に換装された3式中戦車は、日本陸軍の把握する限り、フランスが新たに開発、装備を決断したルノー43中戦車に匹敵する、現時点では、連合国軍内で質的には最強の戦車だった。


 1月18日早朝、ソ連軍の冬季反攻の矛先は、最初の米軍の防衛線を粉砕してから6日余りが経ち、気が付けば彼らのいう所のレニングラード、連合国側に言わせればサンクトペテルブルクまで、後、50キロ程にまで、ソ連軍の地上部隊の先鋒は進撃を果たしていた。

 島田少佐の率いる戦車大隊は、ようやく迎撃態勢を整え、ソ連軍の地上部隊阻止に駆けつけることが出来たという次第だった。


「本来なら、もう少し早く、米軍の救援に駆けつけられたのだが」

 島田少佐は、少し内心で愚痴らざるを得なかった。

 しかし、欧州にいる日本陸軍は、機甲師団のみからなる質的には精鋭と言えるが、戦力的には6個師団に過ぎない。

 そのために、津波のようなソ連軍の攻勢を防ぐには、陸軍のみでは戦力不足であるとして、日本海兵隊との共闘を遣欧総軍の司令官である北白川宮成久王提督から命令された。


 ソ連軍が反攻を開始した当初、日本海兵隊は米海兵隊と協力して、サンクトペテルブルク及びその周辺の後方警備任務に当たっており、すぐに前線に赴ける状態では無かった。

 日本海兵隊自身は、前線に赴きたいと逸ったのだが、参謀長の石原莞爾提督が斜めに動いていたことが、米海兵隊の幹部の反感を買っており、その調整に手間取ってしまったのだ。

(この当時、サンクトペテルブルクにいた米海兵隊の最高司令官ホーランド・スミス提督自身が、そもそも気の強い性格であり、我々は後方警備のために、ここにいるのではない、と主張して、日本海兵隊が前線に赴くのを妨害したという説もある)


 最終的に、アイゼンハワー将軍の介入により、日本海兵隊は最前線に赴けたのだが、結果として、それこそこの当時の戦車部隊からすれば、指呼の間にまでソ連軍の先鋒部隊が、サンクトペテルブルクに接近するという事態が引き起こされてしまったのだ。


「とは言え、悪いことばかりではないか」

 パットン将軍自身の本音では、不承不承のことだったが、米第3軍は巧みに遅滞戦闘を展開し、日米連合軍の航空攻撃は、ソ連軍の槍先を徐々に削り取っていった。

 ソ連軍の戦車は、冬季反攻開始当初の頃から考えれば、最前線に赴いているのは、半減しているだろう。

 当然、それに随伴する歩兵や砲兵も損耗している。


 日本陸軍、海兵隊を合わせれば12個師団、前線兵力は20万人近い。

 これだけの新戦力が、最前線に投入されれば、ソ連軍も退却を余儀なくされるだろう。

 島田少佐は、そう考えることにした。


 そんな想いをしている内に、ソ連軍の先鋒部隊が、島田少佐の視界に入ってきた。

 余りにも寒いことから、それこそ野戦陣地を築くのも一苦労で、現実的には遭遇戦に近い状況での戦闘がやむを得ないようだ。

 味方の歩兵は、少しでも地面の窪みや、雪溜まり等を駆使して、ソ連軍の攻撃を避けようとしている。

 自分達も、いわゆるダグインをしたいのだが、地形を活用するのが精一杯だ。


 ソ連軍の戦車部隊も、地形から危険を察したらしく停車した。

「止むを得ないか。行くぞ」

 島田少佐は、決断を下した。

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