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第5章ー16

 ポーランドとロシアの歴史的関係は、それこそ双方の戦いの歴史と言って良かった。

 ロシア帝国は、モスクワ大公国を母体とする。

 モスクワ大公国は、いわゆるキプチャクハン国の「タタールのくびき」を脱した後、ノヴゴロド共和国を始めとする周辺諸国を征服し、北東ロシア一帯の地域大国となっていった。

 そして、イヴァン4世の下、モスクワ大公国は、いわゆるロシア・ツァーリ国となり、更に内政改革を成し遂げ、外政でもカスピ海方面やシベリア方面に進出して、地域大国から欧州の大国になりつつあったが。

 

 イヴァン4世の死後、ロシア・ツァーリ国は後継者難に陥り、最終的にはリューリク朝が絶えて、「動乱時代」に突入する。

 そして、ポーランド等の介入があった末に、ロマノフ朝が成立し、ロシア・ツァーリ国は再建された。


 東方正教会のロマノフ朝のロシア・ツァーリ国は、その際のポーランド等の介入に対する恨みもあり、カトリックのポーランドとプロテスタントのスウェーデンの角逐の歴史の中で、漁夫の利を得るべく動いた。 そして、ロシア・ツァーリ国は、大北方戦争でスウェーデンを破って、バルト海を「我らが海」にすることに成功し、また、ポーランドを「ポーランド分割」等の末に亡国に追い込み、その領土の多くを自国領に組み込むことに成功し、ロシア帝国へと発展していった。


 その後、独立を追い求めるポーランド人に対し、ロシア帝国はその統治時代に度重なる苛烈な弾圧を加えることになり、更にポーランド人に対して、カトリックを棄てて、東方正教会への改宗を求めもした。

 そうした経緯から、故郷を棄てて、移民するポーランド人も少なくなかった。

 第一次世界大戦後、ポーランド人は独立を果たしたが、その後、第二次世界大戦勃発に伴い、またもロシア帝国の後継国といえるソ連(及びドイツ)の軍靴に、ポーランドは踏みにじられ、ポーランドの国土は独ソによって分割統治されたが、米英仏日伊等の連合国の介入により、ポーランドの国土は解放されたという歴史的経緯がある。


 そうした歴史的経緯からすれば、ポーランド人にしてみれば、ロシア民族は異教徒、異民族であることも加わり、恨み骨髄に徹する存在であるとしか言いようが無かった。

(なお、ロシア民族側にしてみれば、ポーランドこそ諸悪の根源的な見方がされることもあるのだが。

 この辺りはお互いの歴史的認識の差としか言いようが無い)

 そのために、国土の復興がままならない状況にも関わらず、米国等からの様々な支援を受けて、更に米国等に移民していたポーランド系の志願兵等までもかき集めて、ポーランド軍は、今もなお50万人を維持し、モスクワへの最終攻勢に参加しようとしていたのだ。


 こうした経緯まで考えてみるにつけても、高木惣吉少将は歴史の重みを、ソ連に対する春季攻勢の前に感じざるを得なかった。

 日本にしても、ロシア帝国、そして、ソ連とは、いわゆる幕末の開国以来、基本的に敵対関係が続いているとはいえ、直接に干戈を交えたといえるのは、第二次世界大戦勃発までには、日露戦争くらいしかない。

 また、日露戦争においても、直接、ロシアの軍隊が日本本土に侵攻を仕掛けてきたことは、開戦から講和条約締結までの間にはなかったのだ。

 そうしたことからすれば、日本とソ連との関係は、ポーランド等には及びもつかない。


 高木少将は、最終攻勢の後、ソ連は、また世界は、どうなるのだろう、と更に思った。

 ソ連という大国が倒れた後に、民族国家を分立させることで、連合国上層部は100年の平和を、世界にもたらそうとしているが、本当にそうなるのだろうか。

 むしろ、恨み等から世界的な混乱がくるのではないだろうか。

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